中国はいま某国で

2012年6月5日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 華為(Huawei)は今や中国を代表し世界有数の地位を目指す通信関連企業だ。売上高は邦貨にして約2兆2965億円(2010年度)。日本では早くから例えばイー・アクセス社が「イー・モバイル」製品の多くに華為製を採用してきた。

米国や豪州が抱く華為への懸念

 それを案じる声は日本で挙がらないが、米国や豪州では事情が違う。豪州政府は11年末、インターネット網を新設する事業に華為が加わることを拒絶した。

 華為技術有限公司の創業は1987年。創業者で現社長の任正非が中国人民解放軍の元技術者で、由来、とかくの疑いは華為と中国軍、共産党との関係如何(いかん)の一点に集中する。

 疑問が解けないから豪州などでは政府調達の機会に加われない。華為の通信端末を使うと情報が中国のさる筋へ筒抜けになるのではないかといった類の疑心は、随所で暗鬼を生む。

 華為はイメージ挽回に精力を注ぐほかない。資源を投じるなら集中して、ということなのだろう、標的国として選んだのは英国だったようだ。

 ロンドンは金融とメディアの一大中心、英語圏の情報発信地である。ここで好印象を勝ち得れば、これまで何かとしこりがちだった米、豪、インドなどに良いイメージを伝播できるとの読みだろうか。今年五輪を開くロンドンには多くの商機がある。商売にも、もちろんつなげたかっただろう。

 華為には各国有識者を集めて組織した国際諮問委員会なるものがある。加えて英国では、屋上屋となるのを厭わず独自のアドバイザー集団を発足させた。11年5月のことで、最初に選んだのはUKトレード・アンド・インベストメントという日本のジェトロに似た政府組織でトップを務めたアンドリュー・カーンなる人物だ。

大物を取り込み
英政府CIOを採用

 既に野村証券グループ(野村ホールディングス)で副会長を務めていたところ、華為でも広報やイメージ向上の助言をすることになった。続いて同年秋になると英紙『タイムズ』経済部長やウォールストリート・ジャーナル欧州版編集長を歴任した女性のほか、通信、コンピューター業界で名を知られた人たちが加わり、華為の英国顧問団は一層の充実をみた。

 しかし英内外に衝撃を与えたのは、06年から10年まで英国政府全体のインターネット政策を担当する「最高情報責任者(CIO)」という要職中の要職にあったジョン・サフォークなる人物を華為がスカウトし、任正非に直属する「グローバル・サイバー・セキュリティー・オフィサー」の地位に就けたことだ。

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