2024年11月22日(金)

シルバー民主主義に泣く若者

2012年6月14日

日本の生活保護制度の仕組み

 そもそも、日本国憲法第25条が定める生存権を具現化するために作られたわが国の生活保護制度はどのようなものなのであろうか。

 厚生労働省の生活保護制度の紹介ページによれば、生活保護制度は、生活に困窮する者に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としている。生活保護の相談・申請窓口は、申請人の居住地を所管する福祉事務所である。生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提である。

 また、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先する。生活保護の申請を行った場合には、(1)生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)、(2)預貯金、保険、不動産等の資産調査、(3)扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査、(4)年金等の社会保障給付、就労収入等の調査、(5)就労の可能性の調査を行い、支給の可否が判断される。

 その上で、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給され、範囲は、食費・被服費・光熱費等の生活費、アパート等の家賃、医療費等に及ぶ。例えば、東京都区内の生活扶助費(この他に、家賃扶助等が別途存在)では、標準3人世帯では月額172,170円、高齢者夫婦世帯では121,940円の水準である。

河本氏の件でも問題に
「扶養義務者の扶養」

 ところで、生活保護の要件を定めた生活保護法第4条1項では「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」としている。一方、先の河本氏の件でも問題になった扶養義務者の扶養については、同条2項で「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」とし、戦前の救護法や旧生活保護法のように扶養義務者に扶養能力があるときは生活保護が受けられないということを意味するものではない点に注意すべきだろう。

 ただし、民法の扶養に関する規定では、「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない」(730条)、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」(877条1項)、「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」(同2項)とされている。こうした民法の規定については、諸説あるものの、戦前の家制度の残滓であり、時代錯誤的であるとみなす見方もある。

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