2024年12月6日(金)

シルバー民主主義に泣く若者

2012年6月14日

 ある女性週刊誌の報道をきっかけとして、片山さつき参議院議員が国会で、お笑いコンビ「次長課長」の河本準一氏の個人名を挙げて追求する異例の事態を受けて、それまでモヤモヤと漂っていた国民の生活保護制度・受給者に対する関心と反発が急速に高まっている。

 今回の件は、河本氏本人のお詫び会見の内容がすべてで、いずれも真実であるとすれば、不正受給には当たらないはずだ。そもそも生活保護を受けていたのは高額所得者とされる河本氏本人ではなく河本氏の母親であり、仕送り額も福祉事務所と相談して決めていた。

支給水準の見直しも検討

 しかし、残念なことに、法的な問題と道義的な問題を履き違えた感情的な議論が国民の目を曇らせている。しかも、マスコミは連日、被生活保護者の「実態」や不正受給に関する報道を続け、あたかも生活保護の不正受給が横行しているかのような印象を垂れ流し、国民の間に生活保護バッシングに似た状況を醸成した。

 その結果か否かは分からないが、小宮山厚生労働大臣は支給水準の見直しの検討や、親族の扶養が困難な場合には理由を証明する義務を課すことを検討すると表明した。さらに、自民党も政府・民主党に対し、給付水準の10%引き下げや食費や被服費などの生活扶助、住宅扶助、教育扶助等の現物給付化等の「5つの柱」の受け入れを求めるなど(今回の騒動の発端となった片山さつき議員は、自民党の「生活保護に関するプロジェクトチーム」のメンバーである)、現行の生活保護制度と生活保護受給者への風当たりが日増しに強まっている。

昔から問題視されていた「漏給」・「濫給」

 しかし、今でこそ、生活保護の「濫給」が問題にされているが、例えば、2007年7月には、北九州市で生活保護受給者が「就職した」と市職員に虚偽報告を強いられ生活保護を打ち切られた結果、「おにぎり食べたい」と書き残して孤独死した事件や、2012年1月には、札幌市白石区で、知的障害のある妹を抱えた姉が脳内出血で死亡した後、妹が凍死した事件(報道によると、姉は亡くなる1年半ほど前から3回にわたり区役所に生活相談に訪れ、生活保護申請の意向をみせていたが、結局なぜか受給には至っていない)が大きな問題となるなど、一部自治体による意図的な「漏給」が問題視されていた。

 こうした、本当に必要な人に生活保護を出さず(漏給)、不必要な人間に生活保護を出す(濫給)問題は古くから存在するにもかかわらず、現在に至るまで有効な対策が打ち出されてはいない。その結果、納税者からは生活保護制度に対する疑義の視線が向けられる一方で、悲劇的な事例も続発する双方にとって不幸な状態が継続している。

→次ページ 「扶養義務者の扶養」と支給要件


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