実際には、判例によれば、「子の老親に対する扶養義務は生活扶助義務関係としての性質を有し、生活保護法による最低の生活基準額に不足する分を、自らの社会的地位、収入等相応の生活をした上で余力を生じた限度で、分担すれば足りる」し、「兄弟姉妹の扶養義務はいわゆる扶助義務であって、扶養を受くべき者が自己の資産又は労働によって生活することのできない状態にあり、かつ扶養をすべき者が扶養するに足る余力のある場合に発生する」に過ぎない。
その上で、民法第879条は、「扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議することができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める」と規定している。しかも、生活保護法では、扶養義務者の扶養は、保護利用の要件ともされていない。したがって、過度に扶養義務者の扶養を強調するのはミスリーディングであろう。
勤労世代よりも目立つ高齢者の受給
次に、生活保護の現状をデータで見てみよう。
被生活保護世帯、被生活保護人員、保護率は2012年1月現在、それぞれ151.7万世帯、209.2万人、1.64%とリーマンショック以降急増し、平成に入ってから最高を記録している。
また、10年度のデータで、被保護世帯の内訳を見ると、高齢者世帯が42.9%、傷病・障害者世帯が33.1%、母子世帯が7.7%と全体の8割超を占めている。年齢別の被保護人員を09年のデータで見ると、60歳以上が51.9%と全体の端数を超えている。確かに、しばしば指摘されているように、近年、勤労世代の受給も増加してはいるものの、全体に占める割合はそれほどでもなく、実際には70歳以上の伸びが高い。
このように、生活保護受給者の増加にともない、生活保護費負担金も増加し、10年前には2.2兆円だったものが、12年では3.7兆円となっている。ただし、生活保護は「まさかの時のセーフティーネット」であり、日本経済の停滞の長期化とともに、受給者と給付金額が増えるのはその性格からして、なんら問題はないはずである。それよりも問題はいったん生活保護を受給するとそこから抜け出しにくくなることにこそある。
不正受給も過去最多だが…
一方で、不正受給も過去最多となっており、10年度では2万5000件程度、金額では128億円となっている。しかし、支給金額全体に占める割合で見ると0.4%弱と近年ほとんど変化はない。さしあたって不正受給は、巷でのイメージとは逆に、取るに足りない瑣末な問題であることが分かる。