大阪市「子どもの家」廃止
子どもの貧困は家族の貧困


青砥恭 (あおと・やすし)  NPO法人 さいたまユースサポートネット代表理事

1948年島根県松江市生まれ。元埼玉県立高校教諭、現在、埼玉大学、明治大学で講師。教育法、教育社会学、教育方法に関する論文多数。「子ども・若者と貧困」を独自の視点で研究している。2000年以降、地域で若者支援活動ののち、2011年、NPO法人さいたまユースサポートネットを設立し、居場所のない若者の支援活動を行っている。 著書に『日の丸・君が代と子どもたち』(岩波書店)、『ドキュメント高校中退』(筑摩書房)など。http://www.saitamayouthnet.org/

子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会

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今回の話題もやはり大阪からである。また、あの橋下徹大阪市長の意向で、大阪市の「子どもの家事業」が廃止されるという。遊び場などが限られている中で、留守家庭の子どもに限らず、すべての子どもたちに遊び場・居場所を提供する「子どもの家」事業は1989年に始まり、かつては大阪市の子ども対策の目玉だった。

 西成区の釜ヶ崎や山王、生野区桃谷の「子どもの家」に象徴されるひとり親世帯の子どもや障害児が通い、貧困層の子どもや若者たちの居場所、駆け込み場をなくそうという今回の橋下市長の指示に対して強い反発が起きている。

大阪市 3つの放課後事業

 大阪市には子どもの放課後事業として、(1)留守家庭の小学校低学年の子どもたちを夕方7時まで預かる民間の「学童保育」(109ヶ所、2112人、2万円/月)、(2)空き教室で午後6時まで小学生を預かる「児童いきいき放課後事業」(298ヶ所、登録63000人、利用16000人、無料)があるが、(3)『子どもの家事業』(28ヶ所、1927人 利用無料・実費負担)は、「学童保育」のように、小学生の低学年に限定せず、「いきいき放課後事業」のように学校の延長のような事業でもなく、利用者の年齢も0歳~18歳。障害をもった子どもたちも多く、親たちの相談所、なにより様々な問題を抱えた子どもたちの「駆け込み場」「居場所」となっているところに、その特徴がある。

 大阪市は2年後には、「『子どもの家事業』を廃止し、『留守家庭児童対策事業(学童保育)』へ移行」させるという。

 橋下市長は「廃止」の理由についてこう言う。(本年6月8日付け市長の説明)

「子どもの家事業」と「留守家庭児童対策事業」は、ほとんど仕組みは一緒なのに、「子どもの家事業」の利用は無料、一方の「留守家庭児童対策事業」の利用は有料で、同じように行政からの補助を受けながら、結果としての保護者負担に大きな違いがあることは、公平でなく、やはり補助金制度のあり方として問題だと考えます。

 しかし、(1)や(2)と異なり、(3)は多くの貧困層の子どもたちが利用しているという現実がある。そういった事実を考慮しないまま、「似たような仕組みだから、無料のものは廃止する」という乱暴な考え方では、十分な養育を受けてこなかった子どもたちが犠牲となる結果を生むだろう。

地域の子どもの居場所がなくなる
西成区「こどもの里」では…

 「子どもの家」を廃止することで削減される補助金は5400万円。これをカットすることで、利用する子どもや若者たち、地域にどのような影響があるのか、地域の実状を報告したい。

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「子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会」

著者

青砥恭(あおと・やすし)

NPO法人 さいたまユースサポートネット代表理事

1948年島根県松江市生まれ。元埼玉県立高校教諭、現在、埼玉大学、明治大学で講師。教育法、教育社会学、教育方法に関する論文多数。「子ども・若者と貧困」を独自の視点で研究している。2000年以降、地域で若者支援活動ののち、2011年、NPO法人さいたまユースサポートネットを設立し、居場所のない若者の支援活動を行っている。 著書に『日の丸・君が代と子どもたち』(岩波書店)、『ドキュメント高校中退』(筑摩書房)など。http://www.saitamayouthnet.org/

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