前編の記事(新規事業の中身はまるで「大人まんなか社会」)では、こども家庭庁の新規事業が「大人まんなか社会」の温存であると批判した。今回は視点を変えて、有効に機能すれば「こどもまんなか社会」の実現につながる子ども家庭庁の新規事業を紹介したい。キーワードは、いじめ、ひとり親、ヤングケアラーである。
共通するのは、既存の社会システムの矛盾や限界を超えようとしている点である。言い換えれば、「大人まんなか社会」への脅威となりうる特性をもっている。
「こどもまんなか社会」は大人がまんなかではない
改めていうほどのことではないが、「こども」をまんなかに置く社会では、「大人」がまんなかになることはできない。その点で、「こどもまんなか社会」は、社会のまんなかにいる(少なくとも、いると思っている)「大人」にとっては脅威となる。逆にいえば、「大人」が脅威を感じない事業は、「こどもまんなか社会」にとって有益とはいえない。
前編の記事では「大人」の定義は、子どもや子育て世帯、それを支えるエッセンシャルワーカーに対して、政治家や官僚といった政策立案者とした。これは、単純な二項対立の概念の方が問題を簡単に説明できるからである。
しかし、現実はもう少し複雑である。子育てをする親にも子どもよりも自分のことを優先する人はいるし、エッセンシャルワーカーのすべてが子どもを第一に考えて仕事をしている訳でもない。また、政治家や官僚のすべてが子どもよりも社会システムの維持を優先するというステレオタイプな見方も間違っている。
同じように、こども家庭庁がやろうとしている新規事業のすべてが「大人まんなか社会」の維持・強化を目的としているかといえば、そんなことはない。後編にあたる今回の記事では、予算規模などは考慮せず、「こどもまんなか社会」の実現に貢献できるか否かという点から、いくつかの新規事業をみていきたい。
紹介するのは、いじめ、ひとり親、ヤングケアラーをテーマとした3つの事業である。共通するのは、既存の社会システムの矛盾や限界を超えようとしている点である。つまり、「大人まんなか社会」への脅威となりうる特性をもっている。