2023年1月30日(月)

未来を拓く貧困対策

2023年1月3日

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大山典宏 (おおやま・のりひろ)

高千穂大学人間科学部教授

1974年生まれ。社会福祉士。立教大学大学院コミュニティ福祉学研究科博士後期課程修了。コミュニティ福祉学博士。日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科修了。福祉事務所や児童相談所での相談業務、生活保護利用者の自立支援事業の企画運営等の行政経験を経て、現職。著書に『隠された貧困』(扶桑社新書)『生活保護vs子どもの貧困』(PHP新書)『生活保護vsワーキングプア』(PHP新書)など。

 前編の記事(新規事業の中身はまるで「大人まんなか社会」)では、こども家庭庁の新規事業が「大人まんなか社会」の温存であると批判した。今回は視点を変えて、有効に機能すれば「こどもまんなか社会」の実現につながる子ども家庭庁の新規事業を紹介したい。キーワードは、いじめ、ひとり親、ヤングケアラーである。

 共通するのは、既存の社会システムの矛盾や限界を超えようとしている点である。言い換えれば、「大人まんなか社会」への脅威となりうる特性をもっている。

(TATSUSHI TAKADA/gettyimages)

「こどもまんなか社会」は大人がまんなかではない

 改めていうほどのことではないが、「こども」をまんなかに置く社会では、「大人」がまんなかになることはできない。その点で、「こどもまんなか社会」は、社会のまんなかにいる(少なくとも、いると思っている)「大人」にとっては脅威となる。逆にいえば、「大人」が脅威を感じない事業は、「こどもまんなか社会」にとって有益とはいえない。

 前編の記事では「大人」の定義は、子どもや子育て世帯、それを支えるエッセンシャルワーカーに対して、政治家や官僚といった政策立案者とした。これは、単純な二項対立の概念の方が問題を簡単に説明できるからである。

 しかし、現実はもう少し複雑である。子育てをする親にも子どもよりも自分のことを優先する人はいるし、エッセンシャルワーカーのすべてが子どもを第一に考えて仕事をしている訳でもない。また、政治家や官僚のすべてが子どもよりも社会システムの維持を優先するというステレオタイプな見方も間違っている。

 同じように、こども家庭庁がやろうとしている新規事業のすべてが「大人まんなか社会」の維持・強化を目的としているかといえば、そんなことはない。後編にあたる今回の記事では、予算規模などは考慮せず、「こどもまんなか社会」の実現に貢献できるか否かという点から、いくつかの新規事業をみていきたい。

 紹介するのは、いじめ、ひとり親、ヤングケアラーをテーマとした3つの事業である。共通するのは、既存の社会システムの矛盾や限界を超えようとしている点である。つまり、「大人まんなか社会」への脅威となりうる特性をもっている。


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