2022年9月29日(木)

未来を拓く貧困対策

2022年5月11日

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大山典宏 (おおやま・のりひろ)

高千穂大学人間科学部教授

1974年生まれ。社会福祉士。日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科修了。福祉事務所や児童相談所での相談業務、生活保護利用者の自立支援事業の企画運営等の行政経験を経て、現職。著書に『隠された貧困』(扶桑社新書)『生活保護vs子どもの貧困』(PHP新書)『生活保護vsワーキングプア』(PHP新書)など。

 非効率な行政サービスはいつの時代も批判にさらされる。改革が叫ばれるが、一向に改善する気配がない。その対策として叫ばれるのが、評価指標(KPI)、PDCAサイクルによる行政評価、エビデンスベースの政策立案といった民間手法の導入である。こうした耳に心地よい「焼畑農業」式の対策が、現場の荒廃を招いている。

(Skarie20/gettyimages)

現場力を損なう「逆三角形の構造」

 「お役所仕事」とは、非効率の代名詞である。窓口に行っても不親切な対応で、話を聞いてくれない。利用できるサービスのメニューがなく、他の窓口を紹介される。足を運んでも「うちでできることはない」とたらい回し。高い税金を払っているのに、いったい何をしているのか。

 この問題に対して、内閣府でちょっと面白いワーキンググループが設置されている(内閣府「計画策定等に関するワーキンググループ」)。ワーキンググループの結論を先取りすれば、効率的な行政運営を目指した「民間手法の導入」が現場の荒廃を招いているというものである。

 まずは、図表1を見てほしい。国の各府省による計画策定の義務付けが、現場の負担を増やしていることを示したものである。図表では厚生労働省、内閣府、農林水産省が所管する福祉政策を対象としているが、類似の事例はおおむねすべての行政分野に当てはまる。

 国の各府省では、担当課ごとに社会問題の解決に向けた政策を立案する。高齢者、障害者、児童といった各分野の社会福祉制度に加え、待機児童、自殺、食育といった新たな問題もある。図表にはないが、子どもの貧困や孤立予防、最近ではヤングケアラーなども対象となりうる。

 国では、新たな問題が発見されるたびに「プロジェクトチーム」が結成されて解決に向けた「計画」が策定される。その計画とは、多くの場合、都道府県や市町村に計画の策定と実施を求めるものになる。

 それでは、国から策定を求められた都道府県や市町村の人員体制はどうなっているのか。県、市、町と行政単位が小さくなればなるほど、担当者に占める「計画策定に係る担当者」割合が増える。その割合は、県では20人に1人、市では10人に1人、町では4人に1人となる。

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