こども家庭庁は「強い司令塔」になれるのか
こども家庭庁の役割は、行政の縦割りの中で差し伸べることができなかった一人一人の子どもの困難に支援の手を差し伸べることにある。小倉將信内閣府特命担当大臣の語った思いを実現するための事業は、こども家庭庁のなかにしっかりと息づいている。
しかし、その火種は大きなものとはいえず、社会的な注目もなく、課題も充分に整理されていない。2023年に発足するこども家庭庁は、厳しい船出となるだろう。
今回の記事で取り上げた事業は、いずれも「こどもまんなか社会」の理念を実現するものである。しかし、だからこそ事業の目的を達成するにあたり、現場からの抵抗が予想される。
もっとも低コストな抵抗の方法は、「何もしない」ことである。要望があっても、「利用者のニーズがあるかどうかわからない」「受け皿となる民間団体が見つからない」と、のらりくらりとかわして社会の関心が薄れるのを待つ。行政職員の常とう手段である。
単に補助金や助成金のメニューを揃えるだけの従来型の行政運営では、形骸化したサービスメニューを一つ増やすだけになる可能性がある。
それを避けるためには、こども家庭庁が「強い司令塔」としての役割を果たすことが不可欠である。
あえて情緒的な表現を使うなら、こども家庭庁の役割は、「こどもまんなか社会」という新しい理念を掲げて、「大人まんなか社会」に戦いを挑むことにある。その時に、司令官はどこにいるのか。
最前線から離れた安全地帯で、戦略図をみながら兵士を駒のように扱い盤上遊戯を繰り広げるのか。それとも、戦場の最前線で味方を鼓舞し、先陣を切って敵を倒す切り込み隊長の役割を果たすのか。
引き続き、静かな関心をもって、動向を注視していきたい。