National Interestのウェブサイト6月8日付けで、米アトランティック・カウンシルのBarry PavelとNATO本部連合軍最高司令部のJeffrey Reynoldsが、NATOはアジア太平洋地域にも関心を寄せるべきで、その際、最も重要なパートナーとなる日本との関係を強化すべきだ、と論じています。
すなわち、NATOの欧州加盟国は、米国のアジア回帰を米国の欧州からの撤退の始まりと懸念しているが、そうした懸念は無用であり、逆に、これを、大西洋共同体を強化する機会と見るべきだ。
それに、NATOは既に太平洋におけるアクターになっている。米国西海岸はNATOの一部であり、グローバル化の時代にあってアジアで起きることは大西洋共同体にも影響を与える。
ただ、NATOは、アジアに十分なプレゼンスを持たず、情報も第三者に依存しているため、アジアの安全保障問題がわかっていない。
また、豪州や韓国も重要だが、日本はNATOに特別な利益を与えてくれる存在であり、NATOと日本は自然な同盟者だ。日本は通常兵力では地域で最強であり、NATOと協働した経験もある。それ以上に、NATOと価値観を同じくする民主主義国であることが重要だ。
なお、日本は日米関係を何よりも重視しているので、日本への関与は米国を介して行う、つまり、米国のNATO大使に非公式にNATO・日関係を進めてもらうのがよいだろう。
日本も、国内的な制約はあるものの、状況が変わってきており、NATOとの関係強化は日米関係の補足になると考えている。また、米国もNATO・日本協力の強化に関心を示している。NATOは東京に連絡事務所を作るべきだろう。
アジアや欧州では、NATOのアジア関与に懸念を持つ国が出て来るだろうが、それでもNATOは関与を進めるべきだ。アジアに関与しなければ、世界に影響を与える重要地域で安全保障上の役割を果たす機会を逸することになり、リスクが大きくなる。NATOは太平洋に向かうべきだ、と言っています。
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これは、NATOがアジア太平洋地域にその活動範囲を広げること、その際、日本との関係を重視すべきことを論じたものですが、NATOがそう考えて日本との協力を深めたいということなら、日本は協力していけばよいでしょう。米国のアジア重視の補強にもなります。
ただ、米国のアジア回帰に伴って、NATO諸国が本当にアジア・太平洋地域でのNATOの役割強化に向かうのか、また、それをする余裕があるのか、については疑問があります。