2024年11月25日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2012年7月30日

 政府が6月にまとめる若者雇用戦略の柱として、ハローワークを500の大学内に設置するという。その他の対策として、「就職体験のために自治体、学校、労使が協力する」「職業教育の充実」などが挙げられている(5月13日、日本経済新聞)。

 就職体験はすでに行われているし、職業教育もすでにしている。ハローワークを除いてはあまり目新しさがないが、大学にハローワークは効果があるだろうか。

大卒の採用は
伸びていた

大学進学率、就職率の推移
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 その前に、大卒の若者の就職状況を整理しておこう。右の図は、大学進学率と就職率、大学進学率と就職率を掛けたものを示している。大学進学率を長期にわたって見ると、1960年代まで人口の10%程度しか大学に行けなかった。大学に進学させるのは、貧しい時代には大変なことだったのだ。70年代、豊かになるにつれて進学率が高まるが、それも70年代末には頭打ちになる。

 その後、90年代以降、進学率が再び上昇する。70年代末以降は大学の定員(および大学の新設)を抑え、90年代以降には増やしたからだ。

 ところが、大学進学率の上昇とともに就職率が低下している。大学進学率と就職率を掛けたものを見ると、70年代初期から2002年までほぼ2割で一定である。ここから、大学卒業者に相応しい職の数には限度があり、それは2割しかない。だから、4年制大学卒業者の就職状況が悪いのは大学を造りすぎたからだという意見も出てくる。

 しかし、02年以降、大学進学率と就職率を掛け合わせたものは、リーマン・ショックで不況になるまで、3割を超えて上昇していた。

 これは小泉政権の時代である。小泉政権下、大卒の就職状況は大きく改善していたのである。これが小泉純一郎元総理と新自由主義の経済政策のおかげだとまで主張する気はないが、経済はうまくいっていた。若者の就職状況は好転していたのである。金融の量的緩和政策で円が安定し、輸出が好調だったことも大きな要因だろう。より広範な大学の若者がチャンスを摑め、格差が縮小していたのである。

 なぜ、小泉経済政策で格差が広がったとなるのか、私はまったく理解できない。大学卒業者に相応しい仕事の数には限度があるかもしれないが、それは景気が良くなれば増えるのだ。


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