2024年4月26日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2012年7月30日

 ハローワークを大学にという議論は、景気を良くして、大卒者のために全体の職の数を増やすより、与えられた数の中でうまく分配しようという話だ。

 もちろん、いくら景気が良くても、企業と学生がお互いを知って、お互いに相応しい仕事を見出すことは必要だ。

 現在、就職活動はエントリーシートの提出から始まっているが、企業にも学生にも大変な手間であるのは間違いない。昔は、応募できる大学を企業が決める指定校制度で数を減らしていたのだろうが、それはできないとなって、知能検査のようなSPI2と英語能力を見るTOEICが応募者を減らすために使われている。企業は、人材を採用するだけが仕事ではないから、応募者を減らすのは当然のことだ。

 問題は、どうやって減らすのが合理的、かつ、若者の意欲を引き出し、将来必要な勉学をするのに役立つかだ。

 応募者を減らすために大学の成績を使うという手段もあると思うが、誰もそんなことは考えていないようだ。大学の教師としては、大学の授業はなんら評価されていないのだから情けない。

 昔の指定校制度でも、別に大学の教育内容が評価されていた訳ではなく、入学テストの難しさが評価されていただけだ。私が大学生だったころは、授業は休講だらけで、まあ自分で勉強するなり、遊ぶなり、何かに打ち込んだ経験は無駄になりませんよと言われていただけだった気がする。

 ところが、時代は変わって、大学教師もしっかり教えて、学生にも勉強させないといけないとなっているが、やはり企業は学生の成績は気にしないようだ。

 SPI2とTOEICだけでなく、もっと多様な方法で学生の能力を評価すべきではないだろうか。岩波書店が定期採用の応募資格について、「岩波書店の著者や社員の紹介があること」と堂々とホームページに載せたのは正しいと私は思っている。


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