山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2012年8月2日

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 ところが、急きょ香港証券取引所が約1700億円の高額で買収した。LMEは世界の非鉄金属の先物取引で8割のシェアを握っているから、香港証券取引所が世界の非鉄金属を支配することになる。

 香港証券取引所の株主構成は中国の直結資本が8%程度しかなく、大半は大手欧州銀行系など“西側”であるから中国の直接の影響は少ないとみている。現在のLMEの株主たち(JPモルガンなど)も、破格の買収金額に満足をしてLMEの伝統よりも経済合理性を優先した格好である。

中国の影響を払拭できない香港市場

 ところが、実態はそう単純ではない。そもそも中国市場は価格のリーダーになるにはまだ成熟していない。「レアメタルやレアアースが投機と価格操作で市場を歪めているように、LMEメタルが同じような現象に利用される」に違いないという直観からだ。

 しかも、中国の影響を払拭できない香港市場がLMEの伝統に馴染むとは思えない。LMEの伝統は複雑だ。これだけ電子化が進んでいても、リングと呼ばれるサークル内での伝統的な場立ち取引のスタイルを続け、場立ちは家筋が決まっているので誰でもがなれるというわけではない。また、英国法人でなければLMEメンバーになれない。私は、LMEの伝統が悪いと言いたいわけではなく、むしろ非鉄金属の取引をルールでがんじがらめにしているから、トラブルが最小限に抑えられていると考えている。

 仮に何年か後に香港に市場が移転した時には、古き良き伝統も消えてしまうだろう。思い過ごしなら良いが、借り物の民主主義を標榜しても、第2の天安門事件が起こる可能性だって否定できない。私には「借りた場所で、借りた時間で」香港のLMEが機能するとは到底考えにくい。

◆WEDGE2012年8月号より

 

 

 

 

 

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