深夜番組で古い映画をやっていた。ジェニファー・ジョーンズとウィリアム・ホールデン主演で、香港を舞台にした悲恋の物語『慕情』である。映画の中で混血のヒロインが香港の不安定さを称して「On borrowed place, on borrowed time」(借りた場所で、借りた時間で)と告白する場面が印象的であった。香港では、天安門事件から23年たった今年も盛んに抗議デモが行われていた。香港の人々にとっては、今も中国からの影響をどのように受けるのか不安なのであろう。
そんな時に「中国が金融資本主義化するのか?」「それともロンドン金属取引所(LME)が中国市場に呑み込まれるのか?」と思わせるようなニュースが6月15日に飛び込んできた。
香港証券取引所がLMEを買収するというのである。確かに今や中国の非鉄金属の取扱量は世界一で影響力は強く、LMEを傘下に置くと、さらに中国の価格支配力は強化されるように思われるが、事実はどうなのだろうか?
株式の世界では今や香港証券取引所が世界トップクラスであり、中国企業の新規株式公開(IPO)で大成功してきた。外国人投資家にとって中国市場は魅力があるが、中国政府による不透明な取引規制や金融改革の遅れから、内陸に投資することは危険だと考えられている。
一方、香港市場なら自由取引の安全性が保証されているので証券だけでなく、商品取引も期待値が高まったという見方もある。そこで、香港証券取引所は商品(コモディティー)分野にも拡大するという戦略に出た。
一方、欧米の商品デリバティブ市場はCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)とICE(米インターコンチネンタル取引所)に二分されている。今やNYMEXとCOMEXがCMEの傘下に入ったので、ICEはLMEを傘下に収めてCMEを追い抜く可能性もあった。