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2012年5月9日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

雇用創出は企業の社会的責務だが、不採算事業を抱え続けることと同義ではない。
いち早くグローバル化を進めた矢崎総業。従業員は19万人のうち17万人が海外で働く。
では、矢崎総業のお膝元では空洞化が進んでいるかといえばそんなことはない。
海外国内問わず、可能性のある新規事業にヒト・モノ・カネを投じているからだ。

 急速に進んできた円高は目先一服の気配である。政府は、円高が進めば国内産業が空洞化しかねないとして、日本に残すべき企業の事業所に助成する制度などを作ってきた。

 それならば円高一服でひと安心かといえば、決してそうではない。国内景気が低迷から抜け出す気配がない一方で、中国など新興国市場の成長は続いているのだから、当然、日本企業は新興国で儲けようと考える。政府の思惑とは別に、日本企業のグローバル化はそう簡単には止まらないのだ。

 1年ほど前に日本経済新聞が調べた主要企業の対応では、グローバル化に拍車をかけようとする姿勢が鮮明に窺えた。東芝や日立製作所、パナソニックなど電機大手がこぞって海外売上高を全体の半分以上にする計画を持っているという記事だった。東芝55%→63%、日立41%→50%超、パナソニック48%→55%といった具合である。

 いずれも過半を国外で稼ぐ会社になる、という意思を持っていることを示していた。円高で輸出競争力が落ちたという面も確かにあるが、市場があるところへ果敢に出て行こうと、いよいよ腹を括ったのである。

 日本企業のグローバル化はここ20年の大きな課題だった。だが、なかなか進まなかったのが現実だ。国内市場がそれなりに大きく、リスクの大きい海外事業に打って出ないでも、経費の削減などでコストを圧縮すれば何とか食いつなぐことができたからだ。

 円高が進んで輸出産業は大打撃を受けたと信じられているが、為替も実質実効為替レートで見れば相対的に円安が続いてきた。このため、輸出も実は増えていたのだ。財務省の統計をみれば輸出総額は1991年には42兆円だったが、2011年は65兆円である。

 だが、ここへ来て、国内市場の成長が見込めず、円高が一段と進んで輸出採算が厳しくなった。企業はいよいよグローバル化の道を進むしかなくなったのである。

内需型産業は成長できないのか?

 「海外で(安く)作れるものは海外にもっていくのが基本的な考えです」

 自動車用機器大手である矢崎総業の矢崎陸専務は言う。主力のワイヤーハーネス(自動車内配線)は組み立てに人手がかかる労働集約型の事業ということもあり、早くから海外展開を進めてきた。矢崎総業は日本のグローバル化の先兵のような会社だ。

 今では世界39カ国(日本を含む)に421拠点を持つ。グループ全体の従業員は約19万人。そのうち約17万人が海外で働く。売上高も10年度の1兆903億円のうち55%が海外である。

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