中国はいま某国で

2012年8月8日

»著者プロフィール
著者
閉じる

谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 中国は集中的な贈答攻勢で、カリブ海の小国バハマを、米国の影響圏から切り離すことに成功しつつある。

カリブ海のバハマ
中国サマサマ状態

 700余りの小島を合わせた面積が福島県程度のバハマは、フロリダから飛行機でたった45分の距離にある。

 1997年に台湾との関係を見切り北京に乗り換えて15年、バハマ政治家の発言には「北京を選んでよかった」という感じが時折濃厚に滲み出る。

 中国が得る見返りは第1に、国連その他外交場裏における忠実な支持者の獲得だ。カリブ海に「チャイナ」と書いた巨大な広告塔を建てたに等しい状態は、観光で訪れる富裕な米国人に中国の威光をその都度見せつけることになる。それが第2の狙いである。第3は、バハマの成功例を見た中南米諸国がワシントンより先に北京を頼りにし、仰ぎ見るようにすることだろう。

 これと見込んだ国に支援を集中させるのは、軍事力の使い方さながらである。とかくえこひいきをしたがらない「広く・薄く」型の日本流開発援助思想と比べると、戦略性が露骨だ。

 バハマは「カリブ諸国の中ではもっとも豊かで安定した経済で、『一人当たりの所得』においては、西半球において米、加に次いで3番目」だと我が国外務省の説明にある。途上国にしか援助を出さない日本(と先進国)には、バハマに政府資金が出せない。

 バハマが北京から得た大型ギフトは2つ。カリブ海随一となる富裕層滞在型リゾート施設「Baha Mar」の建設と、1万5000人収容のスタジアムだ。ほかに空港と首都ナッソーをつなぐ4車線道路だとか、港湾、橋の建設とかいろいろあるが、チャイナの威光を誇示するのはまずこの2つだ。

 うち競技場の方は本(2012)年2月25日竣工し、お披露目された。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る