7月5日付仏ル・モンド紙で、Jean-Loup Chappeletスイス ローザンヌ大学教授は、ロンドン五輪を機会に、オリンピックの意義を問い、五輪の規模拡大に伴い、それを組織できる国、都市は、益々限られることになった、と述べています。
すなわち、緊縮財政の最中、英国はロンドン五輪で苦慮し、ギリシアの財政赤字の一部はアテネ五輪に起因し、イタリア(ローマ)は2020年の開催地候補を断念した。
例えば、五輪の規模拡大は、公式参加人数でも、明らかである。19万6千人(2000年シドニー)から、22万3千人(2004年アテネ)、更に34万9千人(2008年北京)と増加した。
競技数に関しては、2000年来、28で止まっている(ロンドンではベースボールとソフトボールが無くなり26だが、2016年のリオ五輪ではゴルフとラグビーが加わり28)が、五輪の予算規模を拡大しているのは、近代化した施設が必要なためである。そして、それらを建設しても、五輪後の利用には困ることが多い。
五輪関係の収入は、幸い、前々回から前回にかけ、40%以上増加している。2006年トリノ及び2008円北京のための2005-2008年収入が約55億ドルだったの対し、2010年バンクーバー及び2012年ロンドンのための2009-2012年収入は80億ドル以上となる。しかし、これらの収入は、運営費には充てられるが、スポーツ施設やインフラ整備には充当できない。建設費は、結局、政府が賄う。ロンドンの場合、総予算は、147.1憶ドルで、その殆どを英国政府が拠出している。実際のコストはより多いとの試算もある。例えば、治安対策費は高くなっているが、何ら遺産を残さない。
五輪開催の物理的、精神的遺産は、五輪の莫大なコストを埋め合わせるだけの価値があると言う人もいるが(例えば、ロンドン東地区の活性化)、五輪の経済的影響に関しては、国内総生産への影響は低いと、専門家達は口をそろえて言う。ロンドン五輪についても、最近、格付け会社のムーディーズが、多少の観光収入はあっても、影響は低いとした。結局、問題は費用対効果である。また、かかった予算は、別に使用した方が良かったのでは、との疑問もある。更に言えば、誰が、五輪で得をしたのか、と言うことである。