中国に2回武官として勤務した元陸軍大佐で、中国の核についての著書もあるラリー・ウオーツェルが、ディプロマット誌のウェブサイトに8月7日付で「中国の核情報漏洩」と題する論説を寄稿し、最近、中国からの中国の核戦略についての機密文書とされるものが広範囲に出回っているが、これは米国が中国の核戦力を過小評価するように仕向ける策謀である可能性もあるので、気をつけるべきであり、米は対中戦略対話を行い、真実を明らかにすべし、と論じています。
すなわち、最近、ワシントンDCには、「第2砲兵戦の科学」という極秘文書が中国専門家に出回っている。この文書は、中国が少数の兵器での最小限抑止を目指しているとし、我々に安心感を与える。
しかし、何故に人民解放軍の最も機密を重視する部門からこんなに多くの情報が出てきているのか。
一つの説明は、人民解放軍は政府レベルでの核ドクトリンの話し合いには消極的であるが、西側の政策担当者を安心させたいと考えたということだ。この極秘文書で示されているドクトリンは、人民解放軍の公開文書の内容と同じで、米の核戦力を減らすべしとする、米の軍縮専門家の主張に支持を与えるような内容だ。
いま一つの説明は次のようなものだ。フィリップ・カーバーのように中国の核戦力は400弾頭をはるかに越えているという人がいる。ロシアの学者でも、アレクセイ・アルバートフは、中国は1000から3500の弾頭を持つと推定し、ビクトール・イェシンは1600-1800弾頭保有と推定している。そこで、人民解放軍が大規模な偽情報作戦に出ているというものだ。
もし一つや二つの極秘文書が出てきたのであれば、大した事件とは言えないが、今回は実に多くの文書が出てきている。これは規律違反によるものとは考えがたい。
もし米が「第2砲兵戦の科学」を中国の核兵器のレベルとドクトリンを示すと受け取ると、米は(ロ、印も)核兵器を安全に減少させうることになる。ミサイル防衛も削減できる。しかし、もし中国が実際はずっと大きな核戦力を持っているのであれば、米もその同盟国も将来戦略的驚きに直面することになろう。
この文書が出回るなか、米が中国との間で直接の政府間戦略対話を追求し続けることは緊急の課題だ。米がこういう偽情報であるかもしれないものをベースに将来の兵力や防衛体制を考えるのは賢明ではない、と述べています。
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こういう「機密漏洩」が、偽情報作戦ではないかという疑いを招くのは、中国の核戦力の規模についての情報が限られていることを背景としています。