主婦の既得権を認めれば
配偶者控除は廃止できる


原田 泰 (はらだ・ゆたか)  早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

経済の常識 VS 政策の非常識

なぜ根拠に基づかない政策がまかり通り、本質的な問いが発せられないのか。少子高齢化、経済政策、財政赤字など、日本の戦後モデルに歪が生じているにも関わらず、政治はポピュリズムに陥り、50年、100年先の日本に責任を持てる判断を下していない。根拠・経済原則に基づく合理性という観点から、不合理な政策の問題点を指摘する。

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民主党は2009年衆院選のマニフェストで配偶者控除の廃止を掲げたが、13年度税制改正での廃止も取りやめ、結局4年連続の見送りをすることとなったようだ(11月6日読売新聞)。

 なぜ配偶者控除の廃止が問題になるかと言えば、これによって、妻の給与所得が103万円を超えると家計の手取り所得が増えなくなり、女性の就労意欲を抑え、パートタイマーの賃金相場を下げているとの議論があるからだ。

 もっとも、女性の就労意欲を抑えるのは配偶者控除だけでなく、夫の社会保険に加入できるか、自前で保険に加入しなければならないかの限度、給与所得で130万円の制約も大きい。さらに、妻の家族手当を払う基準を103万円にしている会社も多い。家族手当が2万円なら年に24万円で、これは大きい。

 おおざっぱに言って、103万から170万円近くまで、働いてもほとんど手取り所得が増えないという状況になる(本稿の目的は、家計所得を最大化する方策の解説ではないので、詳しくは税理士のブログなどを見ていただきたい)。

 主婦が働くと、収入を増やしても結局所得が増えないわけで、これは経済学の言葉を使うと限界税率100%ということになる。金持ちでも地方税を含めて税率は50%だから、この制度は著しく就労意欲を下げている。

 人口減少で働き手がいないのに、103万円の壁のために女性が就労調整して年間所得を減らしているのは理解しがたいことである。

 問題は配偶者控除だけでなく、主婦の医療保険、年金問題までにかかわる大問題だ。しかし、小問題を解決できない人に大問題が解決できるはずはない。まず、配偶者控除をなくすことから始めるべきだ。

働く妻と専業主婦の
不公平をなくすには

 配偶者控除の廃止に反対する側の心情は、これまでの制度を前提に主婦であったのに、今さらなんだということだろう。

 大学が多すぎるという田中真紀子文部科学相の問題意識に賛同する人は多かったが、いきなり3大学認可拒否はおかしいというのが良識ある世間の大勢だった。いきなり変えれば混乱が大きいのは当然である。

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「経済の常識 VS 政策の非常識」

著者

原田 泰(はらだ・ゆたか)

早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

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