2024年4月25日(木)

子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会

2012年12月3日

 A子は貧しさと、学力の低さから、中学1年生の1カ月間しか学校に通えなかった。それから2年間は不登校が続く。高校に行く気持ちはない。勉強という言葉だけで拒否反応を示す。母親は金銭管理能力がなく、家賃を滞納して母子支援施設に入所した。弟への母親の虐待もあり、弟は今別の施設にいる。A子と姉は自宅に残っているが、姉も不登校のまま、中卒で仕事をしていない。

 I子には姉がいる。高校3年生の頃、経済的な理由で中退した。母親は精神疾患で子どもの問題を相談するのはむずかしい。支援機関がI子のことで相談しょうとするなら、高校を中退した姉としなければならない。

 N子は母親と祖母と3人で暮らしている。義父のDVで、祖母のうちに避難してきた。転校してから不登校が続いている。祖母宅は汚れが目立つ。N子には学習する部屋はない。

 筆者が知り会った就学援助を受けている(いた)5人の中学生の現状と家族の状況を報告した。すべて母子世帯である。まさしく、貧困と孤立の中で暮らしている。日本語を話せない、障害をもっている、DVなどがリスク要因と思われる事実だが、まさにこの母親の「困難」が子どもたちの貧困の大きな要因になっていると思われた。しかし、その母親たちの困難もすべてこの親たちの責任に帰すことができるのだろうか。孤立の中で子どもを育て、疲労と孤立の中で、精神を病む母親も少なくない。

金銭面にとどまらないサポートも必要

(図表1)
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 図表1は、各世帯が学校外で子どものために支出した教育にかかわる支出を世帯収入ごとに文科省が調査したデータである。「学校外支出」の中で最も大きいと思われる学習塾等の費用を比較しただけでも、公立小学校に通う世帯で、年収1000万円以上世帯(1000万円以上なら何億円でもこの枠に入る)は年収400万円以下世帯の3倍も支出している。学校給食について「子どもの弁当は親が!」という主張もある一方で、現実には、学校給食が唯一の食事という生徒も多数存在する。

 就学援助は、生活保護を受けている「要保護世帯」と生活保護世帯に近い困窮世帯である「準要保護世帯」(市区町村が認定)が支給対象だが、その中には、具体例として先述した、家庭崩壊、ひとり親、貧困、DV、障がい・精神疾患(親と子)、虐待、不登校、依存症(親と子)などの困難を重層的に抱えている多くの家族と子どもたちが含まれている。したがって、就学援助という金銭面にとどまらない寄り添い型のサポートも必要になっていると考えられる。


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