「就学援助」あるいは「就学援助率」という言葉がしばしばマスコミに取り上げられるが、就学援助制度がどんな子どもを対象とした制度かご存知だろうか。今回は、就学援助を受けている子どもの厳しい現状、対象者の増加と地域格差など、就学援助を手がかりに子どもの貧困について考えてみたい。
義務教育段階の公立学校では授業料の負担がないのは当然だが、学校給食費や学用品費、入学準備金、修学旅行費、クラブ活動費、生徒会費、PTA会費など、家計による負担は残る。ひとくちに学用品費といっても、学校指定の制服や体操服、運動靴、家庭科・技術の実習材料、美術・図画工作のための彫刻刀や絵の具、音楽で使用するたてぶえなど、実に様々な出費が求められる。こういった費用負担が困難な困窮家庭に、学校教育法に基づき資金を支給するのが就学援助制度である。(参考:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05010502/017.htm)
子どもの6人にひとりが
経済的な支援が必要な貧困状態
筆者は、さいたま市の生活保護世帯の中学生(高校生)の学習支援事業の委託を受けたNPO法人の代表をしている。運営する学習教室には様々な家庭の子どもたちがやってくる。教室で見せる彼らの顔はどこにでもいる普通の中学生だが、中には虐待を受けていたり、障害を持ち、親のサポートがほとんどないような子どもたちもたくさんいる。そんな子どもたちの親たちもまた、「貧困と孤立」の中で暮らしていた。そんな家族を通して、就学援助制度の課題を提起したい。
ここで、この数年の間に学習教室で関わった5人の中学生の例を挙げたい。実際に学習支援を受けた子どももいれば、誘ったが来なかった子どももいる。すべて就学援助制度の適用を受けていた世帯の子どもたちである。
N男は、外国人の母親が日本語をほとんど話せず、外部との交渉はすべてN男に頼っていた。中学生のN男が家族を支えるような役割をしている。学校での部活にも参加し、進学にも意欲を持っていたが、徐々に疲れてきている。特に漢字ができない。こんな状況でも塾に行く金はない。あきらめの表情が浮かび始めている。
K男の母親は聴覚に疾患があり、さらに長くうつ状態が続いている。K男はそんな母親には進学などの相談をすることはむずかしい。夜になると居場所を求めて出かけることが増えた。高校にも行きたいが、成績が悪くて授業について行けず、意欲を失っている。塾に行きたいと思った時期もあったが、経済的に無理で今は学習することすらあきらめている。