世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月14日

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 豪ローウィ国際政策研究所東アジア部長のリンダ・ヤコブソン(Linda Jakobson)が、11月1日付WSJ紙で、豪州政府は、「アジアの世紀の中の豪州」という白書を出したが、アジアとの関係を密接にすることを説くばかりで、米中衝突の可能性には全く触れておらず、平和が続けばそれで良いが、有事のことも考えて置くべきだ、と指摘しています。

 すなわち、10月28日に、ギラード首相は、「アジアの世紀の中の豪州」という白書を出した。それはヘンリー元財務大臣が中心となって、主として、アジアにおける豪州の経済競争力を論じたものであり、アジア系言語教育の振興などを提言している。

 しかし、問題は、豪州を取り巻く環境が悪化した時である。特に、豪州の戦略的同盟国である米国と、豪州の最高の経済パートナーである中国が衝突した場合どうするかの問題とは取り組んでいない。

 米国とは同盟国であるが、豪州は中国に対する経済依存を深めている。25年前は、豪州の対中輸出は全体の5%以下であったが、今や四分の一である。2011年には、中国人の観光客は最大の顧客であったし、中国人の学生は他のどの国よりも豪州の大学に学費を納めている。

 米豪同盟を強化するギラードの政策には超党派の支持があるが、豪州の高名なビジネス指導者の中には、中国との経済関係を重視して、米国との接近を激しく批判する人もいる。

 この経済と政治の乖離はなんとかしなければならない。まずは、難しい状況にあることを直視すること、そして、豪州と中国との間にも政治的対話が行われるよう努力すべきである。

 米国と同盟し、中国と友好関係を持つことは可能だと言っているが、もし米中が対立したらどうなるか。豪州政府は、いかに有事に対処するかを真剣に考えねばならない、と論じています。

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 これは、同文同種、同価値観の米豪同盟と対中経済依存との間に引き裂かれている豪州の現状を端的に指摘した論説です。論説の結論自体も、米豪同盟の重要性の優先を説くのではなく、中国との間にも政治的対話を深めることを主張するなど、中間的立場を維持しています。

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