米国のシェールガス革命に対抗するロシア


廣瀬陽子 (ひろせ・ようこ)  慶應義塾大学総合政策学部准教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

解体 ロシア外交

紛争、エネルギー、政治、経済など様々な外交カードを所持し、それを絶妙なタイミングで切るロシア。日本の隣人でありながらその内側がなかなか見えない大国に、不気味な印象さえ抱く。ロシアの外交、そしてその動きの背景を、ロシアと周辺国事情に詳しい著者が読み解く。

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石油や天然ガスは有限であり、また最近の中東情勢の不安定さ、さらに原子力発電を巡る議論が世界中で熱を帯びている中、エネルギー源の多角化という課題が世界各国にとって急務となっている。中でも近年注目を浴びているのが「シェールガス」だ。

 米国のシェールガス革命はロシアの天然ガス事業に大きな打撃となり、米ロ間の新たな緊張材料ともなっている。また、米国以外の、特にロシアの天然ガスの重要な「顧客」であった欧州諸国もシェールガスの開発に積極的に乗り出すにあたり、ロシアはその妨害を試みてきた。

 結論から言えば、ロシアはシェールガス革命の影響を危惧しながらも、環境問題等でシェールの開発が世界中で頓挫することを望んでいる。まだ過渡期で、ロシア政府がポジティブにシェール開発に携わろうとしている状況ではないとみていた。

 しかし、そんなロシアでも非在来型エネルギーに注目する企業が出てきたという。しかも、米国の採掘技術を導入するという動きもあるのだ。プーチン大統領も、世界的にシェールガス開発が進まぬよう環境擁護に熱心になる一方で、「ロシアのエネルギー企業はシェールガスの挑戦に対して準備することが必要だ」とも述べている。

 シェールガスをめぐる米ロ、欧州各国の動き、そして日本への影響をみていく。

シェールガスとは?

 シェールガスとは、頁岩(シェール)層から採取される天然ガスのことをいう。天然ガスの貯留層が従来の砂岩ではないことから、「非在来型天然ガス資源」と呼ばれている。

 米国では1990年代から新しい天然ガス資源として重要視されるようになり、「水圧破砕法」と呼ばれる採掘法を導入して開発が進められている。「水圧破砕法」とは、インド等で生育しているでんぷん質の穀物・グアーの粉末からつくったゼリー状の液体を採掘井に高圧で注入し、地層内に亀裂を入れるという方法である。現状では、この方法がどのような爆弾よりも効率的かつ安価だとされている。

米国のシェールガス革命の情報が
ロシアに広まることを警戒するプーチン

 世界各地でシェールガスの開発が試みられてきたが、商業生産が確立しているのは現在のところ米国だけである。シェールガスの原始埋蔵量(推定)はかなり大きいといわれており、米国で数百~千、世界では数千(tcf)に及ぶともいわれている。

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「解体 ロシア外交」

著者

廣瀬陽子(ひろせ・ようこ)

慶應義塾大学総合政策学部准教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

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