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2013年1月17日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

「官民ファンド」の設立が相次いでいる。だが、その中身は「官業」そのもの。
本来、成長分野を探し出して投資するのは民間企業や、民間ファンドの役割。
リスクを「政府出資」、つまり「国民のおカネ」に負わせるのであれば、
企業は自らの役割を放棄しているということになりかねない。

 「官民ファンド」の設立が相次いでいる。農林水産省が「株式会社農林漁業成長産業化支援機構」の設立を進めているほか、経済産業省は来年度予算で「クール・ジャパンファンド」の設立を目指している。

 前者は農業や漁業など1次産業を、製品加工など2次産業や販売・外食・観光など3次産業と組み合わせ、1+2+3で「6次産業化」していくという政府の方針に沿って設立される。後者は日本のアニメや食などを海外に売り込むことを目的とした基金である。

 いずれもアイデアとしては悪くない。官の資金が「呼び水」となって、企業の中などに滞留している民間資金が動き出すなら、それに越したことはない。クール・ジャパンは政府が7月にまとめた「日本再生戦略」の柱でもある。

 だがよく見てみると、官の資金が「呼び水」といえる水準をはるかに超えているようなのだ。先行モデルともいえる「株式会社産業革新機構」の場合、出資金1560億1000万円のうち、民間資金は10分の1以下の140億1000万円。残りの1420億円は政府の出資だ。なかなか出資に踏み切る民間企業が出て来ないためだ。しかもこれに、1兆8000億円もの政府保証枠が設けられている。ここまで来ると、株式会社とは形ばかりで、「官業」「国営事業」そのものと言ってもいいだろう。

 その産業革新機構が、業績不振に陥っている半導体大手ルネサスエレクトロニクスの株主になる、という。ここでも「官民出資」が謳われているが、約2000億円のうち1800億円が機構の出資だという。株式も3分の2を機構が保有するというから、連結決算のルールでいけば、ルネサスは「国」の孫会社ということになってしまう。

 「ルネサスが潰れたらうちの製品ができなくなるから何とかしてくれと産業界に泣き付かれた」と、経産省の政務三役の一人は明かす。自動車や家電製品などを作るには半導体が不可欠で、それを低価格で提供してくれるルネサスの存続が生命線だという主張だったようだ。

 ルネサスには外資系ファンドも触手を伸ばしていた。だが、外資系企業になったら、半導体の納入価格が引き上げられかねない、と恐れたという。「日本の産業のインフラのような会社だから政府である程度面倒みるのは仕方がない」と経産省の幹部も言う。

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