世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年1月8日

»著者プロフィール

 China SignPost共同設立者のコリンズと米海軍大学准教授のエリクソンが、中国の軍艦建造能力の増大傾向を踏まえ、米国としては、「アジア太平洋への回帰」と言うだけではなく、如何にこれに対抗するか、具体的かつ戦略的に考えるべき時期に来ている、と11月1日付Diplomat誌ウェブサイトで論じています。

 すなわち、中国の軍艦造船所の能力は、その船舶のタイプ、数量において、西欧、日本、韓国を上回っている。今の傾向が続けば、2020年までにはロシアの能力と肩を並べるようになり、2030年には米国に近づくだろう。

 中国の軍艦建造能力は、量的にはさほど急激には伸びていないが、質的には著しく近代化されてきている。つまり、量的には、全体の艦隊の前線軍艦数は2005年には172隻であったものが、2012年には221隻にまで増えたに過ぎない。しかし、その質的向上ぶりは、たとえば、その間に、052C/D Luyang型駆逐艦、054JiangkaiⅡ型フリゲート艦、041Yuan型ディーゼル・エンジン潜水艦などが艦隊に加わったことに如実に示されている。その結果、旧式のLuda駆逐艦やMing駆逐艦は姿を消した。

 1990年以来、中国で就役した軍艦の数は、世界第2位のロシアに急速に近づきつつあり、今後2~3年で追い越す勢いである。この時期のロシアの軍艦建造は、ソ連時代のプロジェクトの片づけであり、それに対比して、中国は、2002~2003年から特に潜水艦製造を強力に推し進め、通常軍艦の製造にも力を入れて今日に至っている。

 中国の近隣諸国のうち、韓国は2020年までに、9隻のKSS-Ⅲ3000トン級潜水艦を、また、2018年までに9隻の1800トン級潜水艦を調達することを決定した。これは、現在保有する2倍の潜水艦能力を保持することを目指すものである。また、韓国はイージス艦を今後10年間に倍増することを決定した。ベトナムは中国海軍に対抗するため、ロシアの軍需産業にとっての重要な顧客となった。2012年までに、キロ級ディーゼル潜水艦6隻を購入することを決めた。

 米国にとっての課題は、中国が海軍能力の近代化を図っている状況下で、単に、「戦略的にアジア・太平洋に回帰する」(strategic rebalancing)というレトリックだけでは、米国への関係国の信頼をつなぎとめることが出来ない、という点である。米国としては、中国の海軍力が質的に高度化しつつある今日、米国海軍力の配備計画を調整し、対抗措置を打ち出す必要がある、と論じています。

                  ◆         ◆          ◆

 この論文は、中国が近年、海軍力の増強、特に、その造船能力の質的向上のために如何に力を入れてきたかについて、海軍専門家の立場から具体的に論述したものです。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る