世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年1月18日

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 豪州を代表する戦略家の一人、ヒュー・ホワイト(Hugh White)がシドニー・モーニング・ヘラルドに12月11日付で論説を寄せ、日本との同盟関係に近づこうとするかにみえる豪州の動きに対して、日本の思惑は中国への対抗なのだから、巻き込まれることに豪州の利益はない、として、待ったをかけています。

 すなわち、日豪関係を公式な軍事同盟に持ち上げようとする動きが両政府の間で始まっているが、それにしては、豪州側にその可否をめぐる議論がない。

 日本の潜水艦運用能力を学べることは魅力的だが、かかる重要な力を頼るに際して、その相手国が、豪州にも関係が深い戦略上のいきさつに抜き差しならぬ関わりをもつのみならず、この先どういう針路をとるかわからないような国でいいのか。

 もしも日本が尖閣をめぐって中国との武力衝突になったとして、そのとき豪州が日本の同盟相手だったなら、豪州は日本に加勢し中国との戦争を始めるのが同盟の求めるところだが、そんなことをするのか。もちろんそんなことはやらない。今日のような戦略環境において、両国の国益は、同盟を成り立たせるほど緊密に絡み合ってなどいない。

 あるいは、西パプア・ニューギニアをめぐって豪州がインドネシアと戦った場合、「同盟国」日本は豪州の加勢になど来ないだろう。豪州と日本は戦略的利益として、それぞれ別のものを抱えている。なぜなら互いの戦略的布置が異なるからだ。同盟において大事なのは双方の価値が同じかどうかではない。利益が共有できているか否かである、と論じています。

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 戦略論、安全保障論を扱う教授として豪州国立大学に籍を置くホワイトは、ボブ・ホーク労働党政権で首相顧問など政府要職に就いた経験をもつこともある人物ですが、ホワイトが一貫してとってきた立場は、キャンベラが北京に対する対抗軸となろうとする動きが見えるや、すぐさまその出鼻を挫こうとするものです。

 今回の短い論説にも、ホワイトが年来抱く対日懐疑論がよく表れています。中国を恐れ、忌避するあまり、日本はどこへ行くか知れたものではない、軍事化するかもしれないのだから、豪州は深入りすべきでない、と言っているわけです。尖閣や西パプア・ニューギニアの例などは、ためにする議論の典型としか言いようがありません。

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