World Energy Watch

2013年3月4日

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 この説もかなり疑わしい。震災後に東電管内で発電可能だが使っていなかった設備がどれほどあったのだろうか。また、電気料金が上がると使用を止める人がどれほどいたのだろうか。料金に関係なく、供給できる人はし、節電できる人はしていただろう。

 震災と言う緊急時でなければ、電力料金の高騰は節電を促進する可能性はある。しかし、料金がどの程度上昇すればよいのだろうか。この実験はできない。突然ある地区の電気料金だけ上げて需要の変化を調べることはできないからだ。

 カリフォルニア州が自由化の結果電力危機に襲われた2000年の夏に、期せずして電気料金上昇の影響が分かる出来事があった。カリフォルニア州では卸料金は自由化されたが、小売り料金は価格上昇を恐れた州政府が凍結していた。「カリフォルニアでは小売価格が凍結されていたために、市場の利用ができず需要が減少しなかった。つまり自由化が中途半端だったのが、カリフォルニア電力危機の原因」とよく説明される事態だが、実態は違う。 

 実際には、サンディエゴ地区だけ小売価格の凍結が溶けていたために、料金は上昇した。2000年の夏、電気料金は3か月で2.4倍になった。140%の上昇だ。電力需要は前年比で増えた。暑い夏だったからだ。気温を平年並みに調整すれば13%減だったという論文がある。140%の上昇で13%減。弾性値は‐0.1以下だ。

 電気料金が上昇すれば需要は減少するだろう。しかし、料金以上に大きい要因があるということだ。寒いブルガリアと同じだ。支払いができないと思っても電気を使わざるを得ないということだ。

工場のコストは電気料金以外にも多くある

 自由化でもう一つ言われるのが「料金が高騰すれば、工場などが操業を止め余った電気を売る」という説だ。工場の操業のコストのうち電気料金はどれほどを占めるのだろうか。人件費、設備費のほうが普通の工場であれば大きいだろう。明日は電気料金が上がりそうだから操業を止めると突然決めたら、従業員、取引先はどうするのだろうか。

 コストに占める電気料金の比率が操業を止めるまでの影響を持つほど高い企業がそれほどある筈がない。第一、電気料金がいくらになるかは、当日まで分からない。予想が外れれば、大損かもしれない。工場を止めて、そんなギャンブルをする経営者が日本にいるのだろうか。

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