茂木健一郎 SPECIALトーク(3)

一人ひとりが日本のプロフェッショナルになろう


茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
1962年東京生まれ。東京大学理学部・法学部卒業。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現在はソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授。専門は脳科学、認知科学。2004年に「脳と仮想」で第4回小林秀雄賞を受賞。2006年1月からはNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」キャスターとしても活躍中。文芸評論、美術評論の分野でも活動している。著書として、2008年12月に「クオリア立国論」(ウェッジ)を発刊。

茂木健一郎「伝えたい日本」

脳科学者・茂木健一郎氏が、著書「クオリア立国論」(ウェッジ刊)の出版記念講演会で語った内容を元に構成したもの。

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前回前々回と、さまざまな日本のすばらしさについてお話ししてきましたが、日本のことは日本だけを見ていても気づかないことがあります。

 私は、先日ドイツに行ったときに「レクラム文庫」というドイツの伝統ある文庫シリーズを模したメモ帳を買ったんです。いま、これをお守りにして持ち歩いている。

 レクラム文庫というのは黄色い表紙のとても美しいデザインで、岩波文庫の巻末には、発刊にあたって岩波書店創業者の岩波茂雄さんが記した「読書子に寄す」という小文があります。そこには、「吾人は範をかのレクラム文庫にとり」と書いてある。日本の著名な出版人がそのように言うほど、レクラム文庫はすばらしいシリーズです。

 なぜこれを持ち歩いているか。私は、つい昨年くらいまで、「これからは英語で本を書くんだ」などと言っていました。日本語で本を書いたりするよりも、広く多くの人々に本を読んでもらえると思ったからです。しかし、ドイツに行って、ドイツにはドイツ語でしか表現できないこともあることが分かった。つまり、いかに英語のグローバリズムで世界が塗り込められてしまうことが危険なことかということに、ドイツへ行って気づいたわけです。

 それから私は、多文化のすばらしさがあってこそ、英語のすばらしさもドイツ語のすばらしさも、そして日本語のすばらしさもあり得ることに気がついた。そういうことに気づいたきっかけを大切にするために、レクラム文庫を持ち歩いているんです。

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