世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月8日

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 米外交問題評議会(CFR)のエリザベス・エコノミー上席研究員が、ケリー国務長官が米のアジア回帰に懐疑的であることに、2月27日付同評議会ウェブサイト掲載の論説で、懸念を表明しています。

 すなわち、ケリー国務長官の指名公聴会では、中国に関しては、あらゆることについて、少しづつ触れられただけである。ケリーは、アフリカで中国と経済的競争をし、TPPを中国が貿易についての共通のルールを受け入れるようにするための梃子として使い、北朝鮮の問題で中国ともっと緊密に協力し、気候変動のような、地域的およびグローバルな課題で、中国と最大限の協働をしたい、と言った。

 しかし、最も注目を集めたのは、米のアジア回帰についての、ケリーの次のような発言である。

 「私(ケリー)は、中国の軍事力の増強は、まだ、決定的ではないと信じている。それは、指名承認された暁に、非常に慎重に調べてみたいことである。しかし、我々は、世界中に、中国を含めたどの国よりも、多くの基地、多くの軍事力を持っている。大統領は、豪州に駐留する海兵隊を増やすという宣言をした。中国人は、それを見て、米国は何をやっているのか、我々を包囲するつもりなのか、と言っている。全ての行動には反作用が伴うものであり、それは、物理学の法則であるのみならず、政治、外交の原則でもある。我々は、どう進むべきかについて、思慮深くなければならない。」

 ケリーがアジア回帰に明白な懸念を示したことが、中国の報道機関を色めき立たせ、中国の分析家たちに、オバマがより親中的で穏健な国務長官を指名したという希望を与えたことは疑いない。

 アジア回帰が好ましくないと示唆することで、ケリーは、米国の信頼性にも疑問を生じさせた。海外の当局者と専門家は、既に、米国がアジア太平洋にとどまることについて疑いを持っている。ケリーの疑念は、火に油を注ぐだけである。

 ケリーは、作用反作用の例え話を書き換えることになるかもしれない。中国の外にいるほとんどの者にとっては、中国の強い自己主張こそが作用であり、米国のアジア回帰は、反作用であった。

 ケリーは、ヨーロッパとの自由貿易協定や、中東和平交渉の再開といった、野心的な課題に取り組もうとしているようである。しかし、ピヴォットの本来の論理、すなわち、アジア太平洋の安全保障を確保し、自由貿易協定を通じて地域の経済的ダイナミズムから利益を得るということは、今でも変わっていない。アジアから出ていく「逆回帰」(pivot away)などは、時期尚早である、と述べています。

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 エリザベス・エコノミーは、CFRの中国専門家で、1993年以来、ジョンズ・ホプキンズやワシントン大学などで教えたこともあるようですが、現在は、もっぱらCFRのアジア部長として、数多く論文や論説を発表しています。今回紹介した論説の内容は、全てにわたって真っ当なものです。

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