チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年4月10日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

 2013年3月26日の記者会見時の中国外交部・洪磊報道官は、3月6日に質問の答えに窮した華春莹報道官とは対照的だった。

淀みなく即答した“適切”な対応

 ベトナム外務省が25日、南シナ海西沙諸島の海域で、20日にベトナムの漁船が中国海軍艦艇から射撃を受けたと発表したことを受けて、記者が質問した。因みに、中国とベトナムは西沙諸島の領有権を争っている。洪磊報道官は、射撃があったともなかったとも言わず、「西沙諸島の海域で不法な作業を行っているベトナム漁船に対して中国の関係部門がとった対応は、正当で合理的なものだ」と即答したのだ。「射撃があった」と党中央に決定されても「なかった」とされても、結論は「行動は正当」なのであるから、彼の回答は(中国的には)正に“適切”だったと言える。

 そして翌26日、国営新華社は、海軍関係部門の説明として「2発の赤色信号弾を空に向けて撃ったが信号弾は落ちてくる間に燃え尽きた」として、射撃もベトナム漁船火災の原因を作ったこともないと、ベトナム政府の抗議を全面否定した。

 どこかで聞いたことがある話だ。そう、海上自衛隊艦艇がFCレーダーの照射を受けたと公表した防衛省に対して中国国防部が全面否定したのと、外見は同じ構図なのだ。この二つの事案は、全く別の側面も持ちながら、連動もしている。

ベトナム漁船は射撃されたのか

 別の側面とは、海軍艦艇が民間船(ベトナム漁船)に武力行使したとされることだ。同じように見える実力行使であっても、海軍が実施するのと海監等の法執行機関が実施するのでは全く意味が異なる。後述するが、軍事力を行使するということの深刻さを、中国も国際社会もよく理解している。ベトナムの被害が本当に中国海軍によるものだとすれば、中国がよく日本に要求する「口だけでなく行動で証明する」ことを自ら破ったことになる。

 しかし一方で、火災を起こした漁船の写真を見ても、射撃されたのかどうか断定はできない。当該漁船は、上部構造物、特に最上部に激しく燃えた跡が見えるが、射撃を受けた形跡や弾痕が明らかでないからだ。

 意外に思われるかもしれないが、艦艇から小型船を射撃する場合、大口径の艦砲で射撃した方が機関銃で射撃するより相手に与える被害を小さくすることが出来る。艦砲は精密射撃が出来るように設計されているからだ。船尾の推進部に近いところだけを狙うことも出来る。

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