欧州主要国での電気料金価格も上昇を続け、欧州諸国の高いインフレ率の大きな原因となっている。電気料金の上昇率は、発電の天然ガス依存度により異なるが、依存度が高いイタリア(天然ガス火力比率50%)、スペイン(27%)では高く、原子力発電比率が約70%と高いフランス(9%)では低くなっている。各国政府が税減免、補助金投入などの電気料金抑制策を講じた後でもイタリア、スペインでは大きな上昇を見せている(図-1)。
ロシアとドイツ間を結ぶ天然ガスパイプライン、ノルド・ストリーム1の定期点検終了後に天然ガス供給が再開されたが、6月末現在EU内12カ国向け天然ガス供給を停止、あるいは削減しているロシアが、いつ削減幅を拡大するか分からない。今後もガス・電気料金の上昇が続く可能性がある。欧州との比較では電気料金上昇率が低い日本でも、天然ガスに加え石炭価格の上昇も予想されることから、今後電気料金がさらに値上がりするだろう。
日本もエネルギー貧困層の増加に直面
欧州ではエネルギー貧困との用語がある。基準は国により異なる。英国では地域により定義は異なるが、一般的には冬季に暖房か食べ物かの選択を迫られる世帯のこととされる。ドイツでは公式な定義はないが、所得の10%以上をエネルギー購入、電気、ガス、温水料金に当てる必要がある世帯とされる。
化石燃料価格の値上がりにより、ドイツでは今年5月所得の10%以上をエネルギー支出に当てた世帯が、前年同期より10%以上増加し25%に達した。所得の中央値の60%以下の世帯は相対的貧困層とドイツではされているが、貧困層では、エネルギー支出に10%以上当てた世帯比率が65%に達している。また、所得が中央値の60%から80%の中間層下位とされる層では、比率は前年同期より倍増し、世帯数の40%を超えている。
日本でも電気料金は上昇を続けている。2人以上世帯を対象にした家計調査によると、水道光熱費の消費支出に占める比率は上昇を続けており(図-2)、暖房のためエネルギーへの支出が増える今年2月には12%を超えた。5534円の上下水道費を除くエネルギー関連支出は、2万5699円、住居費を含む消費支出25万7887円に占める比率は約10%になる。
今後電気料金、ガス料金のさらなる上昇が懸念され、ドイツの定義ではエネルギー貧困層に分類される、エネルギー支出が10%を超える世帯も増えると予想されるが、電気料金の負担を中期的に増やす政策も実施されることになりそうだ。