World Energy Watch

2013年4月22日

»著者プロフィール
閉じる

野村宗訓 (のむら・むねのり)

関西学院大学経済学部教授

電力システム改革は万能薬になるか?

 今月初めに、小売り全面自由化や発送電分離を主内容とする電力システム改革の方針が閣議決定された。東日本大震災後、全国の原発は定期点検で停止した後、再稼働の目途が立っていない。国民的討論で原発比率を引き下げる意向が示されただけではなく、ストレステストや活断層調査が慎重に進められ、専門家の分析もまだ結論を見出すには至っていない。そのため、夏と冬のピーク時間帯を中心に需給バランスが崩れ、節電や計画停電が避けられない状況だ。政府は電力システム改革を進め、競争的な市場環境を実現することで危機的状況を克服したいと考えている。

 3年後に導入予定の家庭用まで含む小売り競争は、地域独占の廃止を意味するので、需要家の選択肢は広がるが、発電のボリュームを確保できるとは限らない。また、5年後には料金規制が撤廃される予定であるが、選択の自由が料金低下につながるという保証はない。一般的に、数量が不足している時に、価格が高騰することは容易に予測できる。更に、発送電分離も5年後に、送配電部門の法的分離として実施される。独立的な送配電会社の存在は、発電部門への参入を促進する要因にはなるが、既存の電力会社がこれまで作ってきた原発や火力を代替するだけの大規模電源を期待することは難しい。

 昨年、7月に再生可能エネルギーの全量買取制度が開始され、風力や太陽光をはじめ、地熱、バイオなどが促進される準備が整った。しかし、それらは「自然変動電源」と呼ばれるように、文字通り不安定な性格のものである。風況や日照時間など、地理的要因でバラつきがある半面、開発に適したエリアが存在することも事実だ。新規参入に意欲的な事業者も多数、出現しているが、いかに自然変動電源の特徴である不安定な電力を調整して、しかも需要地まで運ぶ送電線の整備を進めていくのかについては、今後も論争が続くであろう。

 電力システム改革の効果が表れるのは、数年後だが、電力のボリューム不足と料金の上昇傾向は既に、現実に起きている。デマンド・レスポンスなどを通して、家庭用が節電で乗り切れても、製造業の空洞化は避けられない。海外立地に踏み切れない工場が、高い料金負担によって倒産の危機に直面する最悪のシナリオは避けるべきだ。インフラ分野の投資にはリードタイムが伴うので、短期的な解決は不可能であるが、他国の制度設計も参考にしながら、中長期的な観点から安定供給を実現する手法も求められる。

島国イギリスのネットワーク拡充戦略

 電力自由化のパイオニアであるイギリスは、所有上の発送電分離、小売り全面自由化、料金規制の撤廃を実現したが、現在、供給力不足と料金高騰に見舞われている。設備容量で見た原発比率は約20%にのぼるが、70年代~80年代に運開した設備15基は、2023年までにすべて運転停止の予定だ。また、新型原発の開発はホライゾン・ニュークリアによって進められてきたが、昨年3月に、出資していたドイツの大手2社E.ONとRWEが撤退してしまった。この計画は日立により継続されることになったが、運開がいつになるかは未定である。更に、EDFとジョイントを組んでいたイギリスのガス会社セントリカも、新規原発計画から退出する決定を下した。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る