2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2013年3月21日

電力業界の完全自由化と発送電分離が着々と進められようとしている。
2月に電力システム改革専門委員会が出した報告書のストーリーに沿って、
経済産業省が電気事業法の改正案を今国会に提出する。
しかし、日本の現状と今後当面を俯瞰すれば、完全自由化と発送電分離に合理性は全くない。
1990年代、数回の電力・ガス自由化に官僚の立場で関わった筆者が、それに代わる政策を示す。

 政府が今国会に電気事業法の改正案を提出する。経済産業省の電力システム改革専門委員会は2月に電力事業の小売全面自由化と発送電分離を盛り込んだ報告書を取りまとめたが、この方向性を具現化するための法改正である。

 日本のエネルギー事情の現状と未来を直視したとき、これが今やらなければいけない制度変更と言えるだろうか。筆者は反対せざるをえない。

自由化が絶対善ではない

 システム改革委は、電力事業改革を3段階で進めるとした。まず2015年に電力需給を日本全体で調整する「広域系統運用機関」をつくる。第2段階は、小売全面自由化だ。16年を目途に、現在は電力10社が独占している家庭等の小口需要向けの小売に新規参入を認めて自由化し、料金規制を撤廃していく。最後は発送電分離で、18~20年を目途に電力会社の送配電部門を分社化する法的分離を実施する、としている。

 電事法の改正は複数回実施されるとみられ、今国会での改正は第1段階の広域系統運用機関の設立が主眼となる。小売自由化と発送電分離については項目と年限のみ附則に書き込まれる模様だ。

 なぜ完全自由化と発送電分離なのだろうか。

 いま日本は、法治行政ならぬ人治行政により、原子力発電所の適格な運営がされず、代替火力発電の燃料費として追加的に毎日約100億円の国富が資源国に流出している。

 システム改革委報告書の「原子力比率の低下や安全規制の抜本強化、供給力不足等に伴う関連コストの増大は、今後中長期的に電力価格の上昇圧力となる」との問題意識は正しい。しかし、「これまで料金規制と地域独占によって実現してきた安定的な電力供給を、国民に開かれた電力システムの下で、事業者や需要家の選択や競争を通じた創意工夫によって実現する方策が電力システム改革である」という基本的な考え方には、「競争」に対する安易な信奉が感じられる。


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