2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2013年3月21日

 となると実施しなければならないのは発送電分離ではなく、むしろ電力会社の大合併である。規模が大きくなることで、資源調達力が脆くなることはない。当然間接費用も下がるだろう。さらに、供給区域を合併することで、旧A社の発電所と旧B社の発電所がコスト競争状態に置かれることになる。合併後の電力会社に先述したとおり継続された総括原価方式が適用されれば、電力需要はそもそも大きく伸びないから、大型電源同士の間で生き残りをかけた競争が起きることになるのだ。

原子力をどうするか

 今後の電力システムを考える上で、もう一つ欠かせないのが、原発の扱いである。システム改革委の報告書が、原発の今後のあり方について触れていないのは、重大な欠陥だ。

 筆者は原発を当初予定どおり稼働・停止させる運用が日本にとって不可欠だと考えている。しかし、現状のような原子力行政が続くようであれば、従来どおり民間資本が原発を担うことは不可能だろう。

 例えば、浜岡原発は法的根拠のない「要請」で停止させられたまま、徒に時間が浪費されている。他の原発は、定期検査以降、停止のまま塩漬け状態だ。新しい安全基準が施行されるまでの間は、現行基準が適用されるのが法治行政の姿なのに、一向にそのようなことが議論されない。もちろん、事故が起きた際の国の責任の取り方は不明確なままである。

 現在のように原発の運営上のリスクが放置されたままでは、民間資本が責任を負うことはできない。かといって、原発国有化は、民間資産であるものを国に移転することとなり、現実的ではない。

 そこで、筆者としては、資産計上や運営は民間に残したまま、安全基準に則って稼働・停止を判断するという工程管理は国に責任を担わせる形を提案したい。こうすれば、民間にとっては不透明すぎる投資回収リスクを国が保障することになり、原発の稼働・停止から廃炉まで円滑な運営が可能となろう。

 原発の今後を考えるとき、東京電力と福島第一原発の扱いを再検討することから逃れることはできない。


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