WEDGE REPORT

2013年3月14日

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青島矢一 (あおしま・やいち)

一橋大学イノベーション研究センター教授

1965年生まれ。一橋大学商学部卒業後、89年同大学大学院商学研究科修士課程修了。96年マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院博士課程修了。一橋大学商学部産業経営研究所(現イノベーション研究センター)助教授などを経て、12年より現職。

青息吐息のシャープ、パナソニック。
家電業界支援のために実施された家電エコポイント事業が
皮肉にも彼らの経営判断を狂わせ、深刻な経営難に陥らせた。
日本経済再生のための「3本目の矢」として注目される成長戦略だが、
厳しい国際競争の現実を直視せず、「エコ」というマジックワードの力で
安易に政策を進めると、悪夢は繰り返されることとなる。

 第二次安倍内閣が「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を発表し、総額13兆円を超える補正予算を決定した。大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を3本の矢にたとえて、日本経済の復活という目標を射止めることを目指している。

 東日本大震災からの復興の遅れ、原発停止によるエネルギー供給問題、デフレと円高を背景とした景気の低迷、若年層の雇用問題、老朽化したインフラの問題、温室効果ガス排出への対策等々、日本は多様な問題を抱えている。今回の政策からは、「強い経済」を取り戻すことこそが、これら相互に関係する複雑な問題を解決するための何よりの近道なのだという強い主張が感じられる。社会への分配を考える前に、分配の原資を大きくしなければならない。原資が増えて足腰さえしっかりすれば、多くの問題は解決可能なはずである。財政収支悪化に対する懸念はあるものの、民主党政権時代の政策よりは、シンプルでわかりやすい。

 総論としては今回の緊急経済対策に異を唱える人は少ないと思う。しかし肝心なのは各論である。特に具体的な施策である「成長による富の創出」が本当に実現できるかどうかに、対策全体の成否がかかっている。

エコポイントは企業をダメにした

 この点で、近年の政府の政策を振り返ると、筆者のような経営学者の頭を、ある心配事がよぎる。経済・産業政策への多額の税金投入は、それが、日本を基盤とする企業の国際競争力の向上を後押しし、企業が継続的に付加価値を創出して、投入した税金以上の見返りが富として還元されて長期的に正当化される。このような政策効果の因果連鎖を、具体的な企業の行動や企業間の競争のレベルで十分に理解して政策が練られているのだろうか。これが経営学者の心配事である。

 例えば、自民党の麻生政権下でスタートした「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業(以下、家電エコポイント事業)」がある。家電エコポイント事業は、2009年度の補正予算において成立し、その後、民主党政権下で11年3月末まで延長された。6900億円の予算の8割が省エネテレビの購入補助にあてられて、実質的には薄型テレビの購入促進事業であった。

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