エコでエネルギーを語るな


東嶋和子 (とうじま・わこ)  科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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CO削減の切り札として民主党が異常なまでに傾倒する太陽光や風力発電。
だが、コスト、立地、導入までの時間軸からして、この政策には数多くの問題点がある。
また、民主党が比較したがるドイツなどの成功例は特殊事例であり、
地理的条件の異なる日本にはそのまま当てはまらない現実にも目を向けるべきだ。
エネルギー自給率4%の日本にとって、エネルギーはバランスよく持つことが必要であり、
「エコに踊って国滅ぶ」という事態は避けなければならない。

  「エコ」もひと皮むけば、「エゴ」の対立。それが、環境・エネルギーの現場を歩いてきた私の実感である。そんな国際社会のあたり前の現実を衆目にさらしたのが、昨年末の国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)ではなかったか。

 政府は1月末、2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減する目標を条約事務局に提出した。その対策を盛りこんだ地球温暖化対策基本法案が本日12日に閣議決定された。今国会での成立を目指すという。無謀な目標を出したからには、明確な根拠にもとづいた政策案を示すべきだろう。しかし、これまでのところ、具体策や国民への影響を示すどころか、辻褄合わせに数字をこねくりまわしているとしか見えない。危惧するのは、エネルギーセキュリティ(安全保障)の議論がすっぽりと抜け落ちている点である。

 「気候変動はひじょうに長い時間軸で考えなければならない問題である。それに対して、エネルギーの信頼性や安全保障の問題は、まさに今そこまで迫ってきている」(デヴィッド・ハウエル共著『地球の呼吸はいつ止まるのか?』、ウェッジ)という元英国エネルギー相の言葉を出すまでもなく、気候変動よりも資源危機が“今そこにある危機”。それが、世界の認識である。
環境・エネルギー問題を語るうえで3Eすなわち、エコロジー、エコノミー、エネルギーセキュリティのバランスが重要とされる。とりわけエネルギー自給率4%の日本にとっては、エネルギーセキュリティあってのエコノミー、エコロジーであるはず。それが、民主党のエネルギー政策はどうだろう。「ダイエットのためなら死んでもいい」というブラックジョークがあるが、「エコのためなら国滅んでもいい」、そう思っているかのようだ。

太陽光・風力発電に
傾倒する民主党政権

 たとえば、太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーへの異常な傾倒がある。昨年末閣議決定された新成長戦略を見よう。6つの戦略分野の第1に掲げられるのが、グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略。再生可能エネルギーの普及などで、20年までに「50兆円超の環境関連新規市場」「140万人の環境分野の新規雇用」などを目標とする、とうたう。

 その是非はさておき、資源確保については題目だけで目標も方策もない。「安全を第一として(中略)原子力利用について着実に取り組む」という一文があるのみだ。これで「戦略」といえるのか。

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「WEDGE REPORT」

著者

東嶋和子(とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

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