閣僚の発言も非現実的だ。たとえば、岡田克也外相は、党副代表・地球温暖化対策本部長時代、90年以降のCO2排出増が休止中の原子力を代替した石炭火力によるものとし、「再生可能エネルギーをドイツのように積極的に入れることで、少なくとも、6・2%増えるんじゃなくて、フラットにはなったと思うんですよ。(中略)これは明らかに政策の失敗」と述べている。後述する理由から、原子力や火力といった基幹電源の代替を再生可能エネルギーが担うなど、現状ではありえない。
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さらに、小沢鋭仁環境相は昨年末、20年の再生可能エネルギー目標を党目標の2倍とし、対エネルギー比率20%としたい、と発言したが、噴飯ものである。
茅陽一地球環境産業技術研究機構(RITE)副理事長・研究所長によると、この場合、太陽光・風力ともに現在のほぼ100倍の発電量(各2億、1億㌔ワット〈kW〉)が必要で、総容量は日本の発電容量の1・5倍近くになる。それを10年で建設できるはずがないし、場所もない。しかも、安定供給に必要な投資コストは現在の電力総売上げをはるかに凌駕するという。要するに、ありえない数字なのである。なぜありえないのか、詳しく見ていこう。
まず、コスト。太陽光発電を税金で底上げしてみんなが使うようになれば、大量生産できるからコストが下がる。補助金の支持者はそう主張するが、本当だろうか?
日本エネルギー経済研究所によれば、コスト低下は昨今減速しており、今後3~5年で2分の1という目標が達成できても、それ以上の過大なコスト低下は期待できない。風力発電のコストはすでに上昇傾向にある。導入量の増加にともない適地が減るので、今後はさらに上がると予測される。
何より大きいのが、天気まかせであること。太陽光、風力ともに、上図のように時間的出力変動が大きいために、一定の周波数と電圧の電力を供給するには、周波数制御と需給調整が欠かせない。茅氏によると、電力系統内の発電所で調整できるのは、現状では系統容量の数%程度。それより導入が増えれば、調整用バッテリーコストは15円~20円/kWhと見込まれる。太陽光発電の系統安定化コストは、中央環境審議会による30年7900万kW導入のシナリオで3・5兆円、低炭素電力供給システムに関する研究会による同5300万kW導入のシナリオで4・6兆~6・7兆円と試算される。
コストは度外視するとしても、適地には限りがある。第7回中期目標検討委員会資料によると、住宅用太陽光発電の物理的ポテンシャルは1000万戸が限界。現状の1戸3・5kWで単純にソロバンをはじくと、3500万kWである。
風力はさらにひどい。現場に行くと、回っている風車はまれである。「ここはよく回っていますね」「ええ、電気で動かしていますから」という笑えない実話がある。日本では、陸上の導入ポテンシャルは約640万kW。洋上でも、後述する漁業権などの課題が横たわる。