喧嘩の作法

2013年6月19日

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久慈直登 (くじなおと)

日本知的財産協会専務理事

1952年岩手県久慈市生まれ。日本知的財産協会専務理事。本田技研工業株式会社知的財産部長を経て2012年より現職。主要論文としては国連世界知的所有権機構による世界への環境技術普及のための「WIPO Green」として採用された「プロバゲイティング グリーンテクノロジー」など。

 いい商品ほど世界中で流通する。その場合、類似品や模倣品による知財の侵害問題は世界中で同じ時期に同じような内容で発生するが、輸出により各国にばらまかれた商品にどのように対処するのが有効か。普通に考えると製造国で裁判をおこすこと、つまりもとを断つのが最も少ない費用で早く製造をやめさせられるはずである。しかし国によってはそうはいかない。

 中国で行う裁判は延々と時間がかかり、模倣品メーカーはその間にできるだけ稼ぎながら侵害部分を変更するのがお決まりのパターンである。裁判所はあたかも稼がせて売り逃げさせるために長い時間を使っているのではないかと勘繰るほどでもある。

 そういう事案がホンダで発生した。世界中で急速にある中国メーカーの売り上げが伸びていた。外観は別だがカバーをはずすとほとんど同じ中身の商品である。10件近く特許侵害をしている。

 この場合に有効な手として考えられるのは、中国以外の複数の国で勝訴判決を先に得て、模倣品メーカーを管轄する中国の行政当局にその勝訴判決を示すことにより、行政指導で侵害行為をやめさせるという方法である。実際に輸出先の各国で差し止めが続出すれば行政当局として見過ごすわけにはいかなくなるであろう。行政当局による指導が強い国で有効な手である。

 こう書くと簡単そうに見えるが、うまく実行するには作戦が必要である。例えば信頼できる判決を早くだしてくれる国でまず訴訟をおこし、その勝訴判決をちらつかせながら次の国での訴訟につなげるとか、エックスデーを決めて同日に一斉にやるとかである。それは大がかりで大変なこととはいえ、原告側は主導権を握っていて自由に設定できるのに対し、防戦にまわる被告の方は振り回されてはるかに大変である。

 同日訴訟提起もいいが、ちょっとずらして圧力をかけるのもいい。まず確実なドイツから始めてASEANなどのいくつかの国で訴え、最後に市場は大きいが金もかかるアメリカですることにした。味方につける欧州やアメリカの弁護士は他の国の知財裁判も自分にまかせて欲しいと提案してくるが、勝つために金に糸目をつけないというならまだしも、こういう場合に他人に預けすぎてはいけない。仕事はやればやるほど経験値があがるのであり、社内の人材を育成する絶好のチャンスなのである。

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