2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年6月21日

 豪出身のCSISの若手研究者Jack Georgieffが、インドネシアのマルティ・ナタレガワ外相が提唱している「インド太平洋友好協力条約」は、インド太平洋の概念に意味を与えてくれるものである、と5月17日付Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説で評価しています。

 すなわち、インド太平洋の概念は、外交的にも戦略的にも流行っているが、地域にとってそれが何を意味するのか、もっと簡潔に洗練させる余地がある。インドネシアのマルティ・ナタレガワ外相が提唱した「インド太平洋友好協力条約」は、その助けとなろう。ナタレガワの演説は、ケヴィン・ラッド豪前首相が提案した、類似の概念を想起させる。

 ラッドは、広範な対話、協力、政治的問題についての行動、安全保障に関する将来の課題に関与できるよう、汎アジア太平洋共同体を求めた。

 この構想は、地域で冷淡に取り扱われ、すぐに消え去ることとなった。特に中国は冷淡であった。ウィキリークスは、ラッドの構想の真の意図は中国の影響力増大の封じ込めであったと暴露している。

 ナタレガワの構想は、どう違うのか。それは、東南アジア友好協力条約に沿った、新しいパラダイムを求めている。ナタレガワは、インド太平洋には3つの重要な課題があると言っている。すなわち、信頼の欠如、未解決の領域紛争、地域における変化への対応である。外相は、こうした課題に対応するために、インド太平洋で二国間および多国間のマネージメントのための新しいパラダイムが必要であると強調している。彼が提案している条約は、地域の構造に何かを付け加えるというものであり、ラッドの構想のように全てを置き換えてしまうことを意図しているわけではない。

 本質的には、ナタレガワの提案は、ラッドのアジア太平洋共同体構想と類似した文脈にあると見ることができるが、信頼、コミュニケーション、変化する環境における相違の管理を促進する条約という考え方は、ラッドの提案よりも訴求力があろう。

 しかし、大きな問題は、中国である。

 この点に、米豪が果たすべき重要な外交的役割がある。インド太平洋における友好協力条約のメリットを売り込む外交攻勢は、ワシントンとキャンベラによってなされるべきである。とりわけ、豪州は、これを、新しくできた二国間閣僚級対話の優先課題とすべきである。

 インド太平洋という概念は、流動的な文脈の中で、流動し続けているが、友好協力条約の考えは、動的で変化し続けている地域にあって、安定のための要となり得るものである、と述べています。

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 インドネシア外相ナタレガワの提案は、一言で言えば、ASEAN wayを全インド洋、太平洋に適用しようということです。


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