ベテラン経済記者の眼

2013年6月20日

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 久しぶりの「経済事件」にびっくりした人も多いだろう。総合重機大手の川崎重工業で6月13日、臨時取締役会で突如、社長が解任されるという事件が起こった。映画を地で行くような展開に、世の中の「社長」と呼ばれる人の中には首筋に冷たい感覚が走った向きも多かったに違いない。

 名門と呼ばれる東証一部上場企業で経営トップが一瞬のうちにクビを切られてしまう異常事態はニュース性も高く、東京周辺に配られる一般紙(最終版)では東京新聞をのぞく全紙が1面のトップにしていた。40代以上の世代なら、かつて三越百貨店で権勢をふるった故岡田茂氏が「なぜだ」という言葉を発して1982年に解任された「三越事件」を思い出した人も多いだろう。朝日新聞や毎日新聞は「クーデター」という言葉を使って批判した。

 ふだん経済に関心をもたない人にとってもドラマとしては非常におもしろいのだが、この問題を冷静に考えてゆくと、いくつか問題がひそんでいることに気付く。記者会見で新しい社長に就任した村山滋氏は解任された社長らが三井造船との合併交渉を推進していたことに言及し、「(最初から)合併ありきの姿勢に不信感をおぼえた」と説明しているが、それにしてはやり方が乱暴で、唐突感は否めない。

統合問題
情報開示のお粗末な対応

 気になるのは2点。まず、取締役会の決議を経たとはいえ、株主総会の直前という微妙な時期に社長が突如解任されてしまうという特異性。さらに三井造船との経営統合報道について適切な対応をとらなかった点だ。

 川崎重工は株主総会への招集通知を6月4日付で発送しているが、これは前社長名での招集。しかし、株主総会前にトップが交代した結果、会社は株主にあらためて訂正の文書を送り、議案の内容も変えることになった。そうまでしなければいけないほど、どうして経営陣の間で意見集約ができなかったのか。本来ならば時間をかけて練り上げるような案件であるはずのものだが、一部の独走を許し、企業統治の未熟さをさらけだした。6月26日の株主総会は大荒れになるだろう。

 次は三井造船との経営統合をめぐる問題だ。日本経済新聞が約2カ月前の4月22日に川重との経営統合をスクープで報じ、読売新聞や朝日新聞などの一般紙も追随しているが、情報開示という点でお粗末な対応に終始したことだ。こうした報道がなされた場合、仮に決まっていなくても方向性がある場合には「現時点で決定していないが、決まり次第公表する」といった書きぶりでそれとなくにじませることが多い。経済ジャーナリストはその否定の仕方も参考にしてニュース価値を判断する。

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