たとえば、アイスランドへは香港からの直行便がなく、仮に亡命が認められたとしても、その移動は困難なものになりそうだ。アイスランドに移動するには、チューリヒかサンクトペテルブルク、ウィーンで航空便を乗り継ぐのが現実的な移動方法だと考えられている。スイスは中立な外交政策を維持しており、またオーストリアは北大西洋条約機構(NATO)加盟国ではないが、世界的な問題では中立の立場をとっていると見なされているからだ。だが、両国は、米国と身柄引き渡し条約を結んでいるため、その条約に則り、同氏を引き渡す可能性が低くない。
他方、ロシアは同氏に避難場所を提供することを検討すると表明しているだけでなく、米国と身柄引き渡し条約を結んでいないため、同氏を引き渡す可能性は極めて低い。このような条件から見ても、ロシアを単なる経由地として考えるのではなく、最終的な亡命先にしてしまうことが同氏にとって一番安全だとも言えるわけである。
至れり尽くせりの亡命支援も
さらにロシアは最終的に、スノーデン氏がエクアドルへの亡命を申請した後も、彼の亡命に積極的に協力した。米国当局は、スノーデン氏が国外逃亡することを防止するために、彼の旅券を無効にする措置を取っていたが、ロシア側は「その知らせは受け取っていない」と米国側の主張を一蹴し、スノーデン氏を23日に入国させた。しかも、入国の際には、報道陣らとの接触を避けるための「特別作戦」もとられたという。さらに、ロシアの『イズベスチャ』紙によれば、スノーデンと氏その関係者は旅客機から最初に降ろされ、ロシアと緊密な関係を維持しているベネズエラの外交官車両で移動したという。ロシアは、自らの「腹心」にスノーデン氏の亡命の手伝いをさせた形だ。そしてスノーデン一行は、空港内のホテルに宿泊したが、これに関しても、同氏の安全を確保するための措置をロシア当局が強化したことが報じられている。
スノーデン氏は、24日午後2時(日本時間午後7時)すぎにキューバ・ハバナ行きのアエロフロート機でロシアを出国し、ハバナ経由でエクアドルに移動するとみられていた。実際には、24日の搭乗は見送られたようだが、それに対しても、ロシアの空港治安当局が、同氏が搭乗する予定である旅客機の撮影を報道陣に対して禁じる措置をとっていたほどだ。
このように、ロシア側は、米国をあざ笑うかのように、同氏の亡命を助けるべく至れり尽くせりの対応をとったのである。
テレビ番組で語ったプーチンの見解
上述のようにロシアは、本事件について、米英両政府に対する公式のコメントは出していない。しかし、プーチン大統領は自身の見解をロシアのテレビ局『RT』の番組内で語っていた。プーチンは「法の範囲内でされるならば、情報監視は許容できる処置」だとした上で、そのような情報監視が国際テロ防止に有益であることも認めていた。しかし、プーチンは情報を監視する主体が国民の監督を受ける必要があり、また、その活動は全て合法的に行われる必要があると強調した。