世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月12日

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 NATOのラスムセン事務総長が、WSJに6月2日付で寄稿した論説において、NATOのサイバーセキュリティへの取り組みを簡潔に紹介し、NATOの新たな存在意義の一つはサイバー防衛にある、と主張しています。

 すなわち、ベルリンの壁の時代には、戦車とイデオロギーが、閉じた境界を挟んで対峙していた。(コンピューターの)ファイアーウォールの時代にあっては、境界は開放されており、思想は自由で、戦争は仮想的でありうる。しかし、その結果は、破壊的で現実のものである。

 EUの法執行機関、Europolは、サイバー犯罪による企業の損失を、年間1兆ドルと見積もっている。コンピューター・ウィルスは、原発、国際空港、送電網といった重要インフラを止めることができる。テロリスト、活動家、そして、国家による支援を受けた機関は、サイバー攻撃という安価な手段で、相手に重大なダメージを与えることができる。

 世界がますますサイバー空間に依存するにしたがって、ダメージを受ける可能性と、回復にかかる費用が、ともに上昇している。

 こうした脅威の下で、NATOの主要な役割は、我々のネットワークを守ることである。我々は、本部でも、展開されている軍隊でも、サイバー防衛を強化している。昨年、我々は、2500以上の異常なサイバー活動と、侵入の企てに対処することができた。

 サイバー防衛は、まだ、主に個々の国家、政府の仕事である。しかし、脅威が増大するにつれて、NATOは、より高い役割を果たすことを考慮する準備をすべきである。

 第一段階として、NATOは、各国の専門家が同じ知識と言語を共有できるように、サイバー防衛についての定期的な訓練をすることを検討することができよう。それは、情報を共有し、危機に際してより良く協働するための助けとなろう。

 我々は、エストニアのタリンを拠点として、研究、訓練、サイバー部隊の即応能力をテストするための演習を実施している、NATOサイバー防衛研究所(NATO Cooperative Cyber Defense Center of Excellence)を十分活用する必要がある。

 我々は、また、NATO自身のネットワークを攻撃時に保護するための助けとなる、迅速対応チーム(Rapid Reaction Teams) を設立することになっている。次の段階は、こうしたチームを、NATO加盟国の要請に対して利用できるようにすることであろう。我々は、防衛技術や諜報をもっと共有することを視野に入れるべきである。共通の訓練は、協働する能力を高めてくれるであろう。我々のアプローチが似たものであればあるほど、より強力な防護を享受することができよう。

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