サイバー空間の権力論

2013年7月10日

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 前回は権力を類型化し、とりわけ情報社会におけるアーキテクチャ型権力が持つ力に言及した。サイバー空間における権力は目に見えない形で我々の意思決定に介入するが、それは必ずしも善悪では判断できず、適切に用いて行かなければならない。

 ところで、目にみえない権力といえば、先月暴露されたアメリカの巨大監視プログラムの問題が今注目を浴びている。本稿は、元CIA(米中央情報局)の職員であるエドワード・スノーデン氏(30)が告発した一連のアメリカの機密情報、および事件の進展について、事件のあらましといくつかの論点について取り上げたい。

暴露された監視プログラム「PRISM」

 2013年6月6日、英ガーディアン紙や米ワシントン・ポスト紙がNSA(米国家安全保障局)の極秘監視プログラム「PRISM」の存在を暴露した。それによれば、PRISMを利用することでEメールやインターネット通話の記録、動画、画像、SNSの個人情報の収集が可能となる。さらにそれらの情報は、グーグルやフェイスブック、マイクロソフトといった大手企業から入手しているとされている(NSAはFBIと協力し、こうしたネット企業からの情報提供を半ば強制的にしているとの報道もある)。その他にもNSAには監視システムがあと3つあるとの報道もあるが、詳しいことは現時点では完全にはわからない。

 PRISMの暴露によってアメリカ政府は対応に追われ、6月8日、ジェームズ・クラッパー米国家情報長官はPRISMの存在を認めた。ただし、これらのプログラムはアメリカ国民を意図的に標的にはしないとし、また運用にあたっては合法との見方を述べた。

 とはいえその方法には疑問が残る。政府が個人情報を収集・盗聴する場合は、「国情報監視法(FISA)」という法律に従い「外国情報活動監視裁判所(FISC)」に申請・許可されることで、令状なしに実行できる。さらに、情報提供先の企業は政府から情報提供を求める申請があったことすら公表してはならないという決まりがある。これではFISCが形だけの機関であり、こうした行為がとても合法的であるとの見方には納得できないという声も大きい。

 PRISM発覚後、暴露された資料に掲載された大手企業からは、NSAとの共犯関係を否定し、PRISMの存在を知らなかったとの声が挙がった。また政府に公表禁止の緩和を求めると共に、一部許可を得て情報提供申請件数を公表した企業もあった。

身動きが取れないスノーデン氏
亡命先は……

 この暴露事件後、6月9日にエドワード・スノーデン氏が自らが情報をメディアにリークしたことを名乗り出た。

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