2024年11月6日(水)

Wedge REPORT

2013年7月23日

7月8日に施行された原子力発電所に関する新たな規制基準。原子力規制委員会は今後電力会社の申請を受けて、新基準に基づいた原発の安全審査を行い、適合を確認していくことになる。しかし、原子力規制委員会は専門性の欠如、人数不足など数々の問題を抱える状況にある。原発再稼働に向けた課題と解決策を原発事情に精通する筆者が論ずる。

 原子力規制委員会は6月19日に福島第一原発事故の教訓を反映した新たな規制基準を決定し、7月8日に施行された。昨年6月27日に原子力規制委員会設置法が国会で成立・公布されてからほぼ1年経ってようやく停止していた全国48基の原子力発電所の再稼働に向けた正式な手続きの法的基礎が整うことになった。

 また、新基準施行により、満を持して各電力会社から一斉に新基準に基づく許可・認可の申請が提出された。原子力規制委員会には新基準に基づいた審査を速やかに進め、新基準を満たしていることが確認されれば、可及的速やかに許可・認可を出すことを期待したい。

原発再稼働は“リニューアル稼働”

原子力規制委員会は電力会社の申請を受けて、新基準に基づき原発の安全審査を行う
(写真:ロイター/アフロ)

 原発停止は我が国の経済再生にブレーキをかけている。だからと言って昔のままの原発を再稼働することは許されることではない。国会はそのため、昨年6月に原子力基本法をはじめとする原子力関係のほとんどすべての法律を改正し、国の安全規制体制を抜本的に改革。これを受け、昨年9月原子力規制委員会が発足した。旧安全規制体制が推進行政や事業者と不適切な関係にあったとの反省から、新しい原子力規制委員会は日本の行政機関の中で最も独立性の高い三条委員会として位置づけられた。

 この原子力規制委員会が科学技術的見地から国の基準を抜本的に見直して制定したのが新規制基準である。新規制基準には大別して、(1)福島第一原発事故と同じような厳しい事態に陥っても重大事故の発生を防止するための対策、(2)重大事故が起きたとしてもその影響を最小限に止める影響緩和対策、(3)新しい技術知見の反映の義務化、の3つの対策が盛り込まれた。

 (2)の事故発生時の影響緩和対策は国際安全基準で定められており、事故防止対策をどれだけ強化したとしても必要とされている。(3)はいわゆる「バックフィット」と呼ばれるもので、原子力の安全性を優先するため、不遡及の原則(許認可したものを事後法令でさかのぼって違法としないこと)を大前提にしている我が国の法体系で例外的に採用されたものである。


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