安保激変

2013年8月20日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 8月6日、海上自衛隊の最新鋭ヘリコプター搭載型護衛艦(DDH)の命名・進水式が行われ、「いずも」と名づけられた。艦首から艦尾まで通じる広大な全通甲板を持つ、さながら空母のような外観で、海上自衛隊史上最も大きい護衛艦となる。2015年3月に部隊に配属される予定だ。

 「いずも」型は「ひゅうが」型の改良版である。基準排水量は19500トン(「ひゅうが」型は13500トン)、全長248メートル、横幅38メートル、建造費は約1200億円である。同時に5機(「ひゅうが」型は4機)のヘリコプターが発着でき、ヘリの最大搭載数は14機(「ひゅうが」型は11機)である。航空機運用能力が大幅に向上しているのがわかる。加えて、洋上で他の艦船に燃料給油を行うこともできる。同型艦がもう1隻建造中だ。

対潜ヘリ空母の導入は
海上自衛隊の長年の夢

 「いずも」の進水式は国内外のメディアが注目する中で行われた。中国などでは、「いずも」を事実上の「空母」だと報道し、日中戦争に投入された帝国海軍の巡洋艦「出雲」と同じ名前であること取り上げて批判している。

 一方、海上自衛隊は戦闘機の運用は考慮されておらず、攻撃型空母には当たらないと説明している。海上自衛隊が保有するDDHの主要任務は対潜水艦作戦である。「いずも」は一義的には対潜ヘリ空母であり、不透明な経緯で中国が導入した攻撃型空母「遼寧」とは本質的に異なるものだ。

 対潜ヘリ空母の導入は海上自衛隊の長年の夢であった。創設当初、掃海能力しか持たなかった海上自衛隊に求められたのは、商船の防衛と米軍の来援を確保するために必要な対潜水艦能力だった。しかし、潜水艦という「見えざる敵」を水上艦が探知し、識別し、撃沈することは容易なことではない。海上自衛隊は、対潜水艦作戦には艦載ヘリが不可欠であると判断し、1950年代末から「ハンターキラー」と呼ばれるヘリ空母を中核とする対潜掃討群の編成を検討するようになった。

 ところが、独自のヘリ空母の建造計画は100億円と見積もられたため、専守防衛にこだわる防衛庁内局や、防衛予算の増大に後ろ向きだった大蔵省によって拒否された。もっとも、香田洋二・元自衛艦隊司令官が指摘するように、この時代にヘリ空母を導入していれば、他に必要な装備の購入費を圧迫していただろうし、当時の対潜ヘリや音響センサーの水準では十分な対潜作戦が行えたかどうかも疑わしい。

 その結果、ヘリ空母構想は1度なりを潜めたが、ハンターキラーの編成があきらめられたわけではなかった。その後、海上自衛隊ではヘリを3機搭載できるDDHを中心とする8艦6機の部隊編成を行った。4個の対潜掃討群が完成したのは1981年である。構想から実に20年以上が過ぎていた。

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