WEDGE REPORT

2013年9月25日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。現在、神田外語グループ参与。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

北朝鮮が、3度の核実験を経て、すでに事実上、「核保有国」としての地歩を固めつつある。核開発計画の凍結を働きかけてきた6カ国協議の目論見は見事に破綻し、北東アジアをめぐる安全保障環境は、ますます悪化している。「深刻な脅威」と受け止め始めた米韓両国は、すでに本格的な戦略見直しに着手する。日本も、北による核使用の「抑止」に焦点を移し、具体的な対策が急がれる。

 「北朝鮮は最近、核兵器搭載の弾道ミサイル能力を手中にした」─。今年4月11日、米下院軍事委員会で、本来「極秘扱い」の国防情報局(DIA)機密文書が当局の手違いから暴露され、瞬く間にメディアを通じて世界中に衝撃が広がった。

 米ニューヨーク・タイムズ紙によると、同委員会有力メンバーのダグ・ラムボーン議員が、証言台に立ったマーチン・デンプシー米統合参謀本部議長にこの文書の一部を読み上げながら内容確認を求めたもので、その核心部分は、DIAが「控えめな確信」(moderate confidence)と但し書きをつけながらも、すでに北朝鮮が核爆弾のみならず、それを長距離ミサイルに搭載して発射できる態勢に入っているとの判断を示したことだった。

 これに対し、同議長は米軍機密文書が表沙汰になったこと自体に驚きと困惑の表情をみせながらも「私自身中身を見ていないので、コメントできない」と答えるにとどまった。

 その後、国防総省スポークスマンが「北朝鮮が指摘されたような核能力を十分実験し開発し実証済みと結論付けるのは不正確である」と語ったのをはじめ、ホワイトハウス、CIAなど他の各情報機関も、DIA文書の内容を打ち消すのに躍起となっている。

一段と深刻化した北の核の脅威

 その一方で、ジェームズ・クラッパー米国家情報長官は下院情報特別委員会の特別声明の中で、北朝鮮は

・「すでにアメリカおよび東アジアの安全保障環境に脅威を与える能力を立証済みである」
・「道路移動式ICBM(大陸間弾道ミサイル)配備に向けての初期的ステップに踏み込んでいる」

 ─等の点を明らかにしている。また、これより先、チャック・ヘーゲル米国防長官も同月3日、国防大学講演で「北朝鮮は今や核能力を保有しており、ミサイル運搬能力も持っている」と述べていたのである。

 いずれにしてもとくに注目されるのは、韓国軍や在韓米軍内部において、「北の核の脅威」が一段と深刻に受け止められるようになり、対北朝鮮軍事戦略の本格的な見直し作業が始まったことである。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る