中国メディアは何を報じているか

2013年9月27日

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佐々木智弘 (ささき・のりひろ)

防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授

1994年慶應義塾大学大学院前期博士課程修了。日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長を経て、2014年2月から現職。共著に『習近平政権の中国』(アジア経済研究所)、『現代中国政治外交の原点』(慶應義塾大学出版会)。

 2013年9月22日、山東省済南市中級人民法院が、薄煕来に対し、無期懲役、政治権利の終身はく奪、個人財産すべての没収の判決を言い渡した。

 この裁判を中国国内外が注目したのは、薄が中央政治局委員という中国共産党内の序列25位以内の最高位層にありながら、2012年3月に突然失脚した人物だからである。その背景には薄が胡錦濤から習近平への政権交代を前に、権力闘争があったと見られる。しかし、権力闘争の存在を中国の公式メディアは当然ながらこれまで一切報じていない。

 それでは、この裁判を中国共産党中央の機関紙『人民日報』はどう伝えたのだろうか。

法治、反腐敗を強調

 同月23日付『人民日報』は1面でこの判決を報じた。そして4面に、判決文の要約が掲載された。それによれば、(1) 2044万元の賄賂による収賄罪、(2)500万元の公金の私的利用による横領罪、(3)2011年11月の妻薄谷開来らによるイギリス人殺人事件、2012年2月の王立軍重慶市副市長の駐成都米国総領事館駆け込み事件などに関わる捜査への不当関与による職権濫用罪の3つの罪状である。

 この裁判の意義を周知するために、1面には評論員文章が掲載された。タイトルは「法治、反腐敗を堅持し、クリーンな政治を構築する」である。その中で注目したのは以下の部分である。

「薄煕来事件全体を総合的に観察すると、立件、捜査、審査、起訴、公訴から開廷、審理まで、さらに裁判所の判決まで、プロセス全体が事実を根拠とし、法律を原則とし、法治の精神と司法の正義を示し、法に基づき腐敗を取り締まるというわが党と国家の断固とした態度と固い決心を表明した」

「己を律するにはクリーンを第一とし、国を治めるには法を第一とする。変わることなく断固として腐敗を取り締まることは、わが党の有する力の表現であり、全党同志と広範な大衆の共同の願いである」

「全党同志、とりわけ各級の指導幹部は、いかなる人も法律のほかに絶対的な権力はないことを、いかなる人も権力を行使するには人民に奉仕し、人民に対して責任を負い、自覚的に人民の監督を受けることを、必ずしっかりと胸に刻まなければならない」

支持獲得の絶好のチャンス

 評論員論文は、法に基づき公正な裁判を行う法治主義を重視し、腐敗に反対し、汚職を断固取り締まる習政権の強い意志を示したといえる。薄が起訴された翌日の2013年7月26日の評論員文章のタイトルも「法治に特区はない、反腐敗に例外はない」というもので、第一審終了の翌日同年9月27日の評論員文章のタイトルも「法治の考え方と法治の方式で腐敗に反対する」というものだった。習政権の姿勢は一貫している。

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