中国メディアは何を報じているか

2013年10月8日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 中国軍の軍事演習についての報道は通常、兵士たちの勇ましい活躍や血湧き肉躍る兵器のオンパレードである。それもそのはず、軍の機関紙である『解放軍報』はこれまで軍のプロパガンダを担う新聞紙として勇壮な情景を国民に見せつけ、愛国の情や国防の重要性を訴えるような記事を配信し続けてきたからである。

軍の演習さえも形式主義が蔓延?

 ところが10月3日に解放軍報のあまり目立たぬところに載せられた演習を伝える記事が、これまでの報道とは少し趣が異なり話題となっている。「第47集団軍某旅団の実兵演習で反躬自省―本当にそんなにいい成績なのか?」という記事である。お手盛りの演習を反省せよ、と叱咤しているのである。

 日本では勇壮な中国軍の演習ばかりが伝えられるが、その実、演習が指揮官に見せるために自作自演し、お手盛り化している皮肉な状況もあることがよく分かる。近年、習近平国家主席は政府や軍に対し、盛んに形式主義を改めよ、と求めているが、軍の演習さえもそのような形式主義が蔓延していることを示す興味深い記事である。以下抄訳で紹介しよう。

* * *

【2013年10月3日解放軍報(抄訳)】

 陸軍47集団軍に所属するある旅団による演習の情景。射撃兵は6、7秒以内に目標を見つけ出して距離を測り、活発に動きながら、地形を知り尽くしたかのように有利な位置を占拠した。窪地での射撃訓練でも兵士は命中率96%超の好成績を修めた。旅団戦車分隊での実射訓練では大隊の兵士たちは4つの組平均で4発必中を遂げた。

 「本当にそんなにいい成績なのだろうか?」。旅団の指揮官は疑問に思った。そこで調査してみるとやはり問題ありとの結果がでた。

 ゴビ砂漠では灼熱の乾燥のために戦車はもうもうと砂ぼこりを上げ、狙いに大きく影響する。そのため視察しやすいように大隊ではこっそり射撃ルートに水をまいていたのだ。

 旅団の指揮官は厳しく批判し、やり直しを求めたが、こうした状況が少なからずあることが分かったのである。指揮官たちが司令部門で戦術を練る際に、一部の指揮官たちが脚本を作成し、宣伝のせりふに照らして、マニュアルプロセス化されていた。ある隊では射撃の前に前もって陣地の位置や距離を測定し、熟練の射撃兵に射撃させ、新兵にはやらせなかった。

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