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2013年9月17日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 中国造船大手、中国船舶重工(CSIC、中国重工と略称)は11日に株式発行の通知を出したが、これが空母建造のための株による資金調達と話題を呼んでいる。

 人民日報系の『環球時報』は13日付社説で「空母の株で庶民の金儲け歓迎」と解説している。これまでは軍の兵器装備は国防費からの財政支出によって資金が調達されるのが普通であったが、株式市場から調達するという新しい方法に注目が集まっているのである。

* * *

【2013年9月13日 環球時報・社説(翻訳)】

 中国船舶重工は11日に22億800万株を発行し(84億8000万元、約1360億円)、大連船舶重工集団(大船集団、と略称)と武昌船舶重工集団(武船集団)の装備業務を買収すると発表した。

 市場では装備設備業務と空母建設が結び付けられて考えられており、国の「海洋強国建設」戦略に対して大いに期待が寄せられている。

 中国重工の措置は「歴史的」であり、「軍需産業の資産株式化」への大きな動きと捉えられ、軍需産業と資本市場の繋がりへの期待も示されている。

 中国の民間では資本が蓄積されてきたにもかかわらず、国の核心的な国防建設とは長期にわたり断絶状態にあった。これは軍需産業が閉鎖的な経営方式を温存することを助長してきた。

 中国では中心的な軍需産業に従事する人員は、かつてみな軍服を着ており、それが企業化して市場経済の洗礼を受けるまでになったのだ。さらに今後、それが資本市場と繋がるということは中国の軍需産業が変革プロセスにあるということができるだろう。

 空母建造や戦略ミサイル製造のための株購入ということは奇想天外に聞こえるかもしれないが、発展した市場経済においては普通である。世界で著名な軍需産業は高度に開放されていて融資のチャンネルはディズニーやウォルマートといった企業と何ら変わりはない。国から受注があればこうした企業の生産能力が続いていくというわけだ。

 庶民のお金は「お金」であると同時に改革の牽引力にもなる。長い間、大型国有企業の「官僚主義」を巡って論争があり、これにはもちろん軍需産業も含まれていた。株式市場への参与で軍需産業は資金運用の効率と透明性を基準に運用されることになり、これは企業の管理において一つの「革命的変化」を意味する。

 空母は中国人にとって愛国の象徴で、中国重工の発行する株式を「空母株式」とでも呼びたいところだが、愛国心に訴えるなら庶民にみすみす損をさせるような市場取引となることはないだろう。

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