チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年8月13日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

 「中国海軍の行動が日本を震え上がらせた」

 「日米を震撼させた旅」

 「これまでで最も意義のある遠洋航海」

 中国海軍艦艇の宗谷海峡通峡に対する中国国内の評価である。「日本の背後に突然現れた」この行動が日本に対する圧力だったと言うのだ。しかも、この行動は、突然発表された。

 2013年7月11日、中露海軍共同演習「海上連合-2013」のウラジオストックでの閉幕式において、中国海軍副司令員・丁一平中将は、共同演習の成功裏の終了を宣言した。しかし、これだけで終わらなかった。演習に参加した中国海軍艦艇を分派して遠洋航海訓練を実施すると発表したのだ。丁一平副司令員は、「演習終了直後、演習に参加したロシア海軍艦隊は緊急出動の命を受け、出港して新たな訓練審査を実施する。中国側演習参加艦艇の編隊も直接海上に赴き、長期間の海上訓練を行う」と述べた。この編隊が宗谷海峡を抜けたのだ。7月11日、演習終了時に突如この行動を発表したのは、日本が7月9日に中国非難を強めた防衛白書を公表したことに対抗するものと理解できる。

 更に、日本海における中露共同演習実施中に「舟山沖海域で実弾射撃訓練を実施する」と発表したことも、当該演習に連携していると言う。この時期に発表したのは、もし中国が日本に対して開戦を決意したならば、日本の南西から中国が、北西からロシアが同時に行動を起こすことを示すためだと言うのだ。これに、中国艦隊の宗谷海峡通峡が加わると、「日本を四方から攻撃するぞ」と圧力をかけていることになる。

海軍運用の意識の変化はいつから?

 ただし、日本が感じる圧力の度合いは中国海軍の実力にも依る。では、宗谷海峡通教が「日米を震撼させた」という中国海軍の実力はどのようなものだろうか。

 実は、中国海軍が近代海軍としての意識を持ち始めたのは2000年前後である。中国海軍の訓練は、それまで、ほとんど日帰り訓練であった。朝、出勤して艦艇のエンジンをかけて出港し、訓練を実施して帰投、入港して家に帰るという訳だ。これは、「艦を家とする」海軍の発想とは全く異なる。短時間の訓練を主としていたことから、中国海軍は、当時、上陸阻止のために沿岸海域で敵艦艇を撃破するという運用思想であったと考えられる。陸上戦闘の海上版という程度の発想であろう。

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